自慰訓練
「いや……っ、高虎さま! 離して下さい!」
障子に映る影が大きく揺れ、そして下へ倒れていった。畳に体を叩きつけられて、はつはいよいよ瞳に涙を溜めた。
自分を仕立て上げた主は言う。「もっと調教が必要だ」と。それは、望んでいない躯の関係。
主は言う。敵を翻弄するのが忍の役目なのだから、望んでいない関係を求められても泣くなと。
さっさと割り切れと耳元で囁かれ、舌が首筋を這っていく。ゾクリと肩をすくませる。
「お前は変だ。他の奴と組み敷くのは嫌だというくせに、何故俺と関係を持つ?」
「それは……っ」
判っているくせに、と、はつは主を恨んだ。
抵抗しても力ずくで抱く。身の毛もよだつような脅しをかけてきて、黙らせる。
――短く言えば、はつの命はこの男の手中に収まっているのだ。だから、関係を持つのだ。
「…………判っていらっしゃるのに、どうして聞くのですか……?」
そうはつが聞くと、主はフッ、と鼻で笑いそして言った。
「はつの羞恥にまみれた顔を見ると、興奮が倍になるからだ」
この男は恥ずかしい事をサラリと言ってのけるせいで、逆にはつの方が恥ずかしくなる。クツクツと喉を鳴らすように、主は笑った。そして深い口づけを交わす。
口が離れると、主――藤堂高虎はニヤリと口元を歪ませ、はつの上に覆い被さっていた体を急に離した。
「やーめた。今日ははつを抱く気分じゃねぇ」
「えっ……?」
突然の発言にはつは驚きを隠せなかったが、時間が経つにつれ次第に喜びへと変わっていった。しかし次の台詞を聞いた瞬間、再び暗い底へと突き落とされたのだった。
高虎ははつの向かい側へ胡座をかいて座り、太股に肘をついてこう言い放つ。
「俺の目の前で自慰してみろ」
「……っ!?」
「やり方が判らねぇってか……? んなわけねぇだろ。俺がお前の膣口を弄(いじ)るみたいにしてやればいい」
「そん……な…」
「ん? 俺にやられる方がいいのか?」
はつの思っている事は見通しているはずなのに、執拗に聞いてくる。高虎に抱かれるのも、注目されている中で自慰をするのも、どちらとも地獄ではないか。だが、彼女に拒否権などというのは存在しない。今にも泣き出してしまいそうな気持ちを抑え込み、無言で頭を縦に振ると高虎は満足そうに頷いた。
「じゃ、早速やってみせろよ」
「は……、はい……」
はつはゆっくりと膝を立てると、その姿を見た高虎が口を挟んできた。
「違う。もっと脚を広げろ。着物もちゃんと捲り上げろ」
「はい……っ」
着物を太股辺りまで捲り上げて膝を横へ広げた。高虎が次の指示をしてくる。
「よし……。そのままの体勢で下着を脱げ。脚、閉じんじゃねーぞ」
言われるがまま下着に手を伸ばし、肌から外した。はつの視点からも局部が丸見えで、思わず顔を逸らしてしまった。それを見逃さなかった高虎は、彼女の顔に手を伸ばして無理やり視線を戻した。
「ちゃんと見ろ。でないと触れないぜ?」
「っ……」
「じゃあ早速、自慰を始めてみろよ」
おそるおそる右手を秘部に当てた。
ピクリと腰が浮き、きゅう、と萎縮する。
指を入れようとするが、濡れていない為すぐには入らない。無理やり弄(いじ)ろうとすれば痛みが走る。焦るはつを眺めて、高虎は声を殺して笑う。
「だろうなぁ……。今のお前、興奮してねぇもん。濡れるわけないだろ」
そう言って立ち上がり、はつの背後に回った。
「こうすりゃあ少しは燃えるだろ」
「や……っ!」
はつの胸を鷲掴みにして円を描くように揉み、その合間に腰に手を伸ばし帯を緩め始めた。手際よく着物を剥がされて、身につけているといったら足袋くらいしかなかった。
「やぁ……っ、高虎さま……っ」
「手の動きを止めるな」
高虎が乳首を指で転がすと、はつの躯は大きく反応した。
執拗に攻められているせいか、次第に躯が熱くなってくる。同時に秘部も強い刺激を求めてきているようだった。はつは抵抗もなく、第一関節を膣口の中へと挿れ、刺激を与え続けた。
「ん……っ…」
「やっと濡れてきたか。そんなにここを弄られるのが好きなのか?」
そう言って今度はキュッと摘んでくる。
「あん…っ!」
「こんなに硬くしやがって……。スケベなんだよ」
摘んだり転がしたり、乳首攻めが激しくなる一方、はつの右手の動きも変化していく。先程よりも深く指は入れられ、くちゅくちゅと中をかき乱している。高虎が指を入れている時よりも少ないが、愛液が溢れ始めてきていた。
「それだけ濡れてきたんだったら、もう俺の手助けはいらないな」
「え……?」
「後は空いている自分の手で胸を揉むんだな」
胸から手を離し、再びはつと向かい合って座った。
胡座をかいた高虎の股間付近には、小さな盛り上がりが確認出来た。
それを見たはつは、何ともいえない興奮を覚え、きゅうと指を締め付ける。
「見ててやるから、もっと弄ってみろよ」
「は…はい……っ」
言われたとおりに左手で胸を揉み刺激を与えた。既に弄られて敏感になっているせいか、突起に触れただけでビクンとなる。
「おいおい、ただ入れたり出したりするだけじゃなくて、もっと他の部分を弄ってやれよ」
「で、でも……」
「また俺が手伝ってやらねぇと駄目か?」
ニヤリと高虎が笑う。そして手を伸ばすと、膣口の上で勃ちあがっている核に触れた。手早く皮をむき、軽く押し潰すように摘む。
高虎と組み敷いている時と同じ刺激が躯全体に伝達し、大きく背中を反らして快感を露わにした。それまでとは比べ物にならない程、強く指を締め付けられた。ビクビクとひくついており、熱くなっている。
「んああっ!!」
「おーお、こんなに締め付けやがって……。やっぱはつは淫乱な女だな」
「も、もっと……っ弄って下さい……」
「駄目だ。そんなに欲しいなら、自分でやりな」
女核を触った際、指についた愛液を舐め取り、上目遣いではつの顔を見た。羞恥と快感が入り交じった表情を浮かべて、物惜しげにこちらを見ていた。
「……その顔、俺以外の男に見せんじゃねぇぞ」
「んぅ……っ、はいっ……」
時間が経つ程快感が薄らいでいく。それを継続させるため、はつは人差し指で女核を刺激した。
皮はつい先程、高虎の手によってずらされている。その為敏感な部分が露わになっており、少しでも触れるだけで何ともいえない快楽が全身・脳神経へと伝わっていった。思わず甘い声を上げる。
トロンとした目で前を見ると、高虎がニヤニヤと薄笑みを浮かべながらこちらを見ていた。股間部分が先程より高く盛り上がっているようにも思えた。
「ん……っあ…っ、た…、高虎さまぁ……っ」
「そうだ。そうやって弄るんだ」
「だ……だめぇ…っ、そんなに……見ないでっ……」
凝視されて恥ずかしいはずなのに、それが快楽へと繋がっていく。見られていると思う程、指の動きが活発になり奥へ奥へと進んでいくのだ。どうしてそうなるのかが判らず、はつの頭の中は混乱に陥った。
「は……っ、は……。ここ…っ、いいっ……!」
「くくっ。俺に見られてんのに更に弄るのか? とんでもねぇ女だったんだな」
「っ…やぁ……! 嫌いに…っ、ならないで下さい……っ。んふぅ…」
「ああ、嫌いにはならない。俺はお前しか興味ないからな……」
次第に膣壁が震えてきて、指を出し入れするたびにグチョグチョと水音が大きく響くようになった。
はつはこの感覚を知っている。――――もうすぐイってしまう。
こういう時、高虎ならどうしているかも知っている。
はつは女核を弄りながら、激しく二本の指を出したり入れたりを繰り返した。愛液は指から滴(したた)れ落ちて、床に小さな水たまりを作った。
「あっ……ああ…っ、も…もう……っ!」
「そろそろイくのか? いいぜ、見届けてやるから」
「ああんっ! いい…っ、ここが……いいです!!」
羞恥心などはもはや残っておらず、目の前にある快楽しか映っていない状態だった。
限界だと感じたはつは、女核を軽く練るように押した。
「んあぁぁっ!! い……イキますぅ…っ!」
膣(なか)に入れていた指を折り曲げると、いやらしい声を上げて絶頂を迎える。
一度愛液が溢れるように出て、それから絶え間なく潮を噴かせた。はつは肩で息をしながら頬を紅潮させ、どこを見ているともとれない視線を泳がせた。
「ちゃんと一人でイけたじゃねーかよ。すげぇいやらしかったぜ」
高虎ははつに近づき、耳元でこう囁いた。そのままはつを押し倒し唇を重ね合わせる。甘い声がはつから漏れた。
「今度は俺が気持ちよくなる番だ」
「たか……」
「指だけじゃあ、物足りねぇだろ?」
そう言って高虎は袴の紐を緩め、はつの脚の間に割り込んだ。高虎の背中に腕を伸ばして、はつは彼の行為を受け入れる。
心の中で主は嗤った。その事を彼女は知らない。
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09/02/27