閑話


 あのね、昨日はね、キョンくんのお友達がうちに来たんだよっ。古泉くんていうの。いつも笑ってて優しいんだよ!
 昨日はね、キョンくんと二人だけだから遊びに行かずにキョンくん帰ってくるまで待ってなさいって言われてたの。だから遊べなかったんだ、ごめんね?
 それでね、キョンくんがね、帰ってきたと思ったらばたーんって倒れちゃって! びっくりした〜! 死んじゃったかと思ったもん。
 キョンくんね、すっごいお熱出ちゃって、うーんうーんって苦しそうだった! 大丈夫かな? キョンくん死んだりしないよね?

 うん、それでね、古泉くんががばーってキョンくんのこと抱っこしてくれたんだよ。よかったー、古泉くんがいて。
 古泉くんて力持ちなんだね、って言ったら笑ってた。それでね、キョンくんが寝てるから「向こうに行きましょう」って言われたんだけど、でもキョンくん学校のお洋服のままだったから、キョンくんがいつも寝るとき着てる服を着せてあげようとしたの。
 でも重くて無理で、困ってたら古泉くんが着せ替えてくれたんだよ。優しいよね!
 でもね、古泉くんずっと何か言ってたんだよねえ。何だっけ、たしか「雪山では一緒に入浴までしたのですから、このぐらい……」とか「なるべく見ないように……、ああもう、何だってこんなにどこもかしこも熱いんだこの人は! ……って、熱があるからですよねそうですよね、わかってますとももちろん。そんな理由がなければ僕が彼に招かれるはずはないのですから」とか、ずっとぶつぶつ言ってたんだよ。何でだろ? ちょっと怖かったなあ。
 それでね、古泉くんがキョンくんみたいに顔が赤かったから、うつっちゃったんだと思って大変と思ったら「違います」って。「これは、僕の心情の表れです」とか言ってたかな。しんじょうって何だろ? 知ってる?

 それからね、古泉くんとお買い物に行ったんだ。キョンくんにもね、おでこに貼る冷たいやつと美味しいお水と、リンゴ。
 キッチンに行ってご飯作ったんだよ。古泉くんがね、包丁とんとんとーんって上手だった! 先生みたい! すごいねえ、古泉くん上手だねえ、おうちでちゃんとお手伝いしてるんだねって言ったら、笑ってた。それでね、あたしもお手伝いしたんだよ。家庭科で習ったもんね! 
 ご飯はすぐ出来たんだけど、キョンくんは食べれないからかわいそうだなあって思って、リンゴをむいたんだよ。ウサギさんのリンゴ。
 古泉くんが「ほう。よくご存知ですね、こういうとき兎リンゴを食べるものだと」って言ったから、あたし言ったんだよ。古泉くんがしてくれたんでしょうって。
 前にね、キョンくんが階段からででででーって落っこったことがあってね、入院したことがあったのね。そのときね、古泉くんがリンゴをむいてくれたんだって。それでウサギさんにしてくれたんだって。キョンくん美味しかったってゆってたよって言ったら、古泉くんびっくりしてた。何でだろ? 「そうですか、あれを……」って言ってたかなあ。もしかしてキョンくん、ちゃんとありがとうって言わなかったのかな。だめだねえ。

 それからお風呂に入って出たら、古泉くんが「僕がついてますから先に寝てください」って言ったの。
 あたしもキョンくんが心配だから一緒にいるって言ったんだけど、古泉くんが駄目ですって。古泉くんいつも優しいけど、あのときはちょっと怖かった。「あなたにうつりでもしたら彼が悲しみます」って。キョンくんが泣いちゃったらやだから先に寝たんだけど、今日起きたらキョンくんお熱さがってたからよかった!
 キョンくんが遊びに行っていいぞって言ったから遊びに来たの。キョンくんもお熱ないけど咳が苦しそうで「まだ安静にしていてください」って古泉くんが言うからおうちで大人しくしてるみたい。

 あたしも今日は早く帰るね! またキョンくんにリンゴむいてあげようかな。
 もう古泉くんがむいてあげてるかな?
 キョンくん、今度はちゃんとありがとうって言えたかなあ。
 帰ったら聞いてみようっと!


【完】


2007 04/17