15:セーラー服(跡部と宍戸)


「お。セーラー服」
「あ?」
 宍戸の視線の先にセーラー服姿の少女を見つけ、跡部は鼻で笑った。
「俺様の方が100倍麗しいぜ」
「……恥ずかしい奴だな、てめーは」
 そういうんじゃなくて、と宍戸はいかにセーラー服が男のロマンであるかを語る。
 一通り話し終わり満足げな宍戸を、いかにも胡散臭いものを見る目で跡部が見てきた。
 その視線に気圧され、宍戸はひるんだ。
「な、なんだよ?」
 どうせこいつのことだから、高貴な俺様は生憎とそんな下賤な趣味は持ち合わせていねえ、とかなんとか言ってくるのだろう。
 そう思って、宍戸はため息を吐いた。
 昔から、ことごとく跡部とは趣味が合わない。
 これだけ一緒にいるってのに、共通する話題がテニスのことしかないだなんて、全くおかしな話だと思う。
 だが、それでも一緒にいるってのは、……気が合うってことなのだろうか。
 いやいや、そんな恐ろしい。
 跡部は不躾に宍戸の頭からつま先までじろじろ見回すと、一言。
「まあ、似合わなくもねえか」
 呆気にとられる宍戸を置いて、跡部は歩き出した。
 今、この男はなんと言った?
 似合わなくもない? なにが? 誰に? ……俺に?
「だっ、ちょっと待て跡部! いつ俺が着るっつった!!」
 宍戸が焦りながら追いかけると、跡部が不敵な笑みを浮かべて振り向いた。
 怒りで顔の赤い宍戸に、
「てめえにそんなシュミがあったとは、長いつきあいなのに知らなかったぜ」
「だ、だからっ」
「今夜は、それ着て泊まりに来るか? アーン」
「誰が行くかっ!!」
 耳元で熱っぽく囁かれ、宍戸は益々顔を赤くした。
 跡部の顔も見る気になれないと、踵を返す。
 今日は久しぶりに跡部の家へ寄る予定だったが、なかったことにしてしまおう。
 背後からついてくる足音に気づかない振りをして、宍戸は歩き続ける。
「心配しなくとも、俺様が特別製を用意してやるぜ?」
「誰が着るかっ!!」

 【完】


2003 12/03 あとがき