なんで。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。
頭を抱える。頭が痛い。自分の中にあるものを喚び出すたびに頭が痛くて仕方ない。これは与えられて、この世界に受け入れられて得た力だっていうのになのにどうして振るうのがこんなに辛いんだろう。
なんでこいつらはこんな目で自分を見るんだろう。理解なんてしてほしくないしされたくもない。だけど、なんでだろう。すごく嫌だ。 すごくいやだ。
―――――さん。
どうしてか浮かんできた人の甥が、眼鏡の奥からのぞく目で自分を見ている。この少年だけは他の奴らとは違っていて、でも、それでどうにかなるってわけじゃない。
話したことを思い出す。そんなことは思い出さなくていいのに。ウザくて仕方ないガキのはずなのにこの一年を、思い出す。―――――さんの家に居候していて、どうしてだかたびたび接触してきてたまに手の上で転がしてやっていたんだけどちっとも気付かなくて内心で笑っていた。
ああもうまた頭が痛い。
否定、否定、否定、否定ばっかりだ。知ってるよ、もういいよ、ずっとそうだった、みんなそうだった、わかってるから消えてくれよ。
消してやるから消えてくれってば。
力を振るう。倒れない。目障りだ。放っておけばいいと思ったけど消してやる。ガキが、ガキが、ガキがわかってもいないくせに青臭い正義感振りかざして。吐き気がする。本当吐きそうだ。頭が痛くて。
そういえばあのときも吐いたっけ。そう、いえば、こいつにはあのとき会ってた。
なんでそんな目で見るんだよ畜生!
他の奴らみたいに見ればいいじゃないか、許せないって、殺してやるって、かかってくればいいじゃないか、殺してやるから!
なんでだよ、なんでなんで。頭が痛い。吐き気がする。ずっと笑えてきたのに今じゃちっとも笑えない。
ゲームだって思ってた、楽しかった、退屈な人生にやっともらったご褒美だって、そうだ、ゲームだ、ルールを決めて罠を仕掛けて、頭いいから、頭脳派だから、ずっと勉強ばっかりしてきたから得意なんだ。
なのになんで。
なんでルールを壊そうとするんだよ!
なんでそんな目で見るんだよ、ずるいよ、おまえずっとあのひとと、いやもうそんなのはどうだっていい、捨てた、全部捨てた、あの子だって手にかけたんだ、戻れっこないんだからどうだっていいんだ、だけどムカつくから消えてくれ!
頭が痛い頭が痛い頭が痛い、黙れ黙れ黙れ、うるさいよ、おまえらうるさいよ!
体中の血管が脈打つ、なんだこれ、足元からだんだん這い上がってくる。中から出てくるものと同じになっていく気がする。
それはかまわない。どうせこの世は全部一緒になる。自分だって例外じゃない。それはきっと、気持ちのいいことだ。楽しいことをして、気持ちのいいことをして、最後に全部わからなくなる。最高のことだっていうのにどうして邪魔するのかわからない。
楽しかった、すごく。気持ちがよかった、すごく。
ずっとゲームを続けてきて、楽しくて、気持ちよくて、どうにかなっちゃいそうで。
満たされてたのに、なんで邪魔するのかわからない。夢なんて所詮覚めるものなのに、未来なんて所詮閉ざされるものなのになんでわざわざ逆らってくるのか、ものすごくウザくて仕方がない。
ああ、また、あの目だ。いいよなあ、おまえ同じのくせに、それなのにどうしてこんなに真逆なんだよ。ウザい、すごくウザいよ。
楽しいのにどうして邪魔してくるんだよ。知らないくせに、何も知らないくせに、ガキのくせに!
痛い。
目が嫌だ。
あの目が一番、嫌だ。
似ているのに似ていない、思い出す、やめろ、もう戻れっこないし戻る気もないんだから、居場所なんてどこにもない、隣になんて戻る気なんてない、みんな消えるんだからいいだろ、楽しくなんてなかった、みんな嘘だったんだよ、ゲームだったんだ、騙してたんだよ!
わからないなんて馬鹿だってずっと心で笑って顔でも笑ってた、ずっと楽しかった。なのにどうして邪魔するのかわからない。
ウザい、倒れない、頭が痛い、楽しい、目が嫌だ、気持ちいい、戻れないのに思い出す、苦しい、消えろ、負けるはずがないのに、……どうして、なんで―――――

「ガキどもがぁ……負けるはずねえんだ! だっておかしいだろ!? 負けるはずねえんだっ!!」



―――――っておかしいだろ



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