「なんでお前、そんな俺に優しいの」
「だって俺、親分やもん。親分ってのは、面倒見がよくないとあかんねん」

邪魔するなよ、とスペインに釘を刺されたので、部屋の端に椅子をだしてきてそこに座って、ロマーノはスペインをじっとながめていた。狭くはない武器庫を忙しなくスペインが動き回る。ロマーノにはいつだって優しい手も、きっと戦場では平気で人を殺めているのだ、とロマーノはぼんやりと思う。どちらがいいとか、どちらが本当のスペインだとか、そういうことはなくて、きっと両方とも、スペインなのだ。

「………」

とりあえず、どちらにしろスペインは馬鹿だとロマーノは思う。そういうことを尋ねているんじゃないということくらい察せ、とため息をついた。

「ん、ロマーノ?疲れとるん?」
「………いや、別に」

にかっ、とスペインは笑った。何も考えていないような、心からの笑みだとすぐにわかるその明るさ。

「だったらため息なんかしたらあかんで。あんな、ため息をつくと、幸せが逃げんねん」

全く、どうして肝心なところだけ鈍感なのか、こいつは。それともあれか、ロマーノがため息ばかりついているから、ロマーノの幸せが逃げていってしまっているだけなのか。
けっ、とロマーノは馬鹿にしたように笑ってみせた。ため息をつかないくらいで、こいつの鈍感が治るわけがない。長いこと傍にいるから、それくらいわかってる。

「そんなの迷信だろ、ばーか」
「そうとも限らへんで?実際、俺はため息を最近ついとらんからな!」
「は?」

スペインが口にしたその言葉の意味を図りかねて、素っ頓狂な声をあげたロマーノ。スペインはロマーノのほうを見ず、楽しそうに武器を磨いていた。
なんだかとっても悔しくなったロマーノは、真っ赤な顔のまま、ため息をつかないでいいくらい、もっともっと優しくしてくれたらいいのになんてことを、頬を膨らませながら考えた。










  し  あ  わ  せ  た  め  い  き  
 








(2007/07/14)