わかるわけないじゃない、だって言ってくれなかったんだもの。

「聞いて、ない。聞いてないよそんなの。それなのにわかるはずないじゃない」
「……言えるかっつー話だぞ、と」
この人がこんなに顔を赤らめるところ、始めてみた。だっていつだって飄々としていて、ニヤニヤ笑っていて、それで少し変態で、だからそんなの気付けるわけ、ないじゃない。ずっと、この人はわたしのことを、『わたし』ではなく『古代種』として見ているのだとばかり思っていた。

「あなたが、わたしを?」
「……頼むから何度も言わせないでくれ」
「だって、……うそ、」
「ジョーダンでこんなこと言えないですよ、と」

この人が、わたしを?わたしは、そっと右手を伸ばして、レノの頬に触れた。ざらざらとした肌は、とてもとても熱かった。わたしの手に重ねるようにレノは左手を顔のほうにもってきた。レノの大きな手は反対にとても冷たく、そう、まるで血が通っていないかのよう。

「頬、熱いね」
「そりゃどうも」

真っ直ぐにレノはわたしを見つめている。わたしは、目をそらせなくなる。その綺麗な深い色の瞳に吸い込まれそうになる。

「……キスしていい?」

レノが口を開いた。いつものようなあのおふざけの色はなくて、逆にわたしがドキドキしてしまう。と、レノがふきだして、それからケラケラと笑い始めた。

「……顔真っ赤」
「…………人のこと、言えないよ」

わたしの顔が、熱くなるのを感じた。目の前でレノが笑う。どきどき。……あれ?

「あれ…?」

なんだろう、すごくすごくドキドキするの。なあに、これ?
わたしは、刹那レノを無言で見つめたあとで、レノの頬に沿えていた手をはなして、それからレノの胸にとびこんだ。

「――っ!?」

レノが驚いて声にならない悲鳴に近い音を漏らした。ぎゅっとレノの身体を抱きしめる。ワイシャツに顔を埋めると、心臓の音が伝わってきた。ドキドキ。わたしの心臓も高鳴る。どきどき。……あ、どうしよう、なんだかすごい幸せかもしれない。

「……エアリス?」

恐る恐る、レノはわたしの名を呼んで、それからまるで壊れ物でも扱うかのようにわたしの身体に腕をまわした。どきどき。ドキドキ。どうしよう、わたしの心臓、こんな、なんでどきどきしてるの?










   T  H  U  M  P  ×  3  !  !  !
                (うわぁなんでこんな、…ドキドキするよ?)