「…………そういえば、リリーって夏が好きだったよな」



久しぶりの晴れだったからたくさん洗濯をした、それらを夏への準備のような暑さのなか干していたとき、唐突にシリウスがつぶやいた。リーマスは隣で、シーツを干しながら、笑った。



「あぁ、そういえば夏になるといつもリリーははしゃいでいたね」
「日焼けするーとか言いながらアイツが一番海に行きたがってたりな」


遠くでセミが鳴く声が響いていた。空に飛行機雲が出来ていた。しばらく消えないと、次の日は雨になるんだと教えてくれたのもリリーだった。


「懐かしいな。そうえいば夏になるといっつもリリーがスイカを買ってきて、スイカ割りしようって言ってたな」
「それでいっつもどっちが先に割れるか、わたしとジェームズで競争になった……」
「結局どっちのほうが美しく割れたかで最後は競い合ってたな、シリウスとジェームズ」



シリウスはけらけらと笑った。それは、隣にジェームズとリリーが居たときと全く同じ笑い方だったが、しかしその笑い声に同調する者はおらず、声はただ広く深い青空に溶けていくだけだった。



「……………スイカ、もう売ってるかな」
「売ってるんじゃないのか?洗濯物干し終わったら買いに行ってみるか」
「………2人じゃ食べきれないんじゃないか」
「そのときはそのときだ」



なんで、夏は何回も来るのに、その同じ夏のなかに彼らはいないんだろう。












      す  い  か  の  匂  い 

        (「また来年もスイカ買ってくるわね」「そしたらまた勝負だぜ、シリウス!」)























(居なくなるということはあまりにもすがすがしく、かなしい。 2006/06/13)