「君とリリーが結婚するなんて、僕は夢にも思わなかった」
「同感だ」

ジェームズはシリウスの言葉に応えながら鏡をみてだ髪をいじっていた。くしゃくしゃの黒髪を、直したいのかはたまたもっとくしゃくしゃにしたいのか、傍目で見ているシリウスにはよくわからなかった。

「僕の結婚式のほうが早いと思ってたのにな……。君はリリーとじゃないと結婚しないと思っていたしリリーは君と結婚するくらいならダンブルドアあたりと駆け落ちするかと予想していたんだが」
「酷いな」

くすくすと笑うジェームズ。しあわせいっぱいの今の彼にはどんなに度を越した皮肉だって賛美の台詞に聞こえることだろう。 シリウスは、ジェームズと違ってさらさらとしているその黒髪を不機嫌そうにかきあげた。

「……機嫌わるいだろ、シリウス」
「はァ?」

ジェームズは鏡の中に写る自分自身から、親友へと視線を移した。ちゃんとした恰好――親友の結婚式に参加するにはそう、ぴったりの――をしたシリウスはジェームズから見ても、まぁ、モテるという事実に素直に頷けるくらいだった。例え、その表情が今のようにいたって不機嫌そうでも(むしろその表情をセクシィだと思うかもしれないし)。

「君の表情見てればわかるさ。まったく、僕を誰だと思ってくれてるんだい?」
「幸せいっぱいの新郎」
「まぁそうだけど。でも僕は新郎である前に君の親友だよ、シリウス」

本当にこれは現実なんだろうか。あのリリーと、あのジェームズの結婚式なんて。本当に?
「だから、君が今、いじけてる理由もよく知ってるさ」
「……なんだよ」

ジェームズはきちんとシリウスに向き直った。そして、口を開きかけ、しかしまた閉じた。かと思うと今度はにっこりと笑顔で、

「僕とリリーに子供ができたら、その子の名前は君が考えてくれよ」
「……な、なんだよ急に」
「いやかい?」
「いや、…むしろ嬉しいけど、」
「だから、」

シリウスの言葉を遮って、ジェームズが言った。しばらく間を開けて、そして続ける。

「だから、子供が生まれるまでは少なくとも、僕の親友で居てくれよ、シリウス・ブラック」
シリウスは一瞬きょとんとしていたが、やがて親友の言葉の意味が頭いっぱいに伝わると、苦笑するように微笑んだ。

「そりゃ、今から名前を考えておかなきゃな。大事な親友のために」













      だ か ら 今 は せ め て 不 変 で な い と 信 じ さ せ て 

            (きっとそのこはめいっぱいの祝福をうけて、愛される)























(寂しいと思うなんて、間違ってるかな 2006/06/17)