昨日、俺を“除霊”して事務所に戻った黒木は、居るはずの恋人が不在なことに気がついた。
 コンビニか、漫画喫茶にでも行っているのだろう、と最初は考えたが、結局朝になっても恋人は戻らず、
行方を捜すうちに、俺の待ち合わせに遅れた。

「こんなことになるなら、携帯を持たせてあげればよかった…ネット犯罪に巻き込まれるのが心配で」
 黒木が溜息混じりに言うのを、俺は呆れて聞いた。
「心配なのはわかりますけど、恋人ったって、いい大人なんでしょ?…黒木さんの束縛がキツイんじゃないですか」
 軽く言ったつもりだったが、彼の気に障ったらしい。ふとした拍子に、隙を取られてこのザマだ。

「……っ」
 人差し指が、俺のアレの先を撫でる。と思うと、暖かい手のひらが、直にアレを包み込んだ。
 俺はテーブルの端を掴んだ。
「どこに行っちゃったのかなぁ。───────もしかしたら、家に戻るつもりとか…?」
「家…?」
「以前、実家が×県にあるんじゃないか、と僕が話したことがあったんですよ。…ああ、そうだ。きっと、そうに違いない」
 なんか話が見えないんですけど…全然。
 黒木は急に確信した表情になった。そして、俺に向き直った。
「行きましょう」
「へ?!」
 俺は素っ頓狂な声を上げた。
「×県へ」
 何考えてんだよ、このホモエロ霊媒師は!!
「ばっ、馬鹿言うなよ、一体どういう関係で?つか、俺は会社が……、仕事があるんだよ…っ」
「一緒に行かないと、キスしますよ。今、ここで」
 黒木は俺のアレを握り、顔を近づけてきた。おおおい!
 その背後に、じゃがバターを持った店員が近づいてくるのが見える。
「わ、わかった!わかったから!!!!行く、行きますっっ」
 俺は早口で首をぶんぶん振りながら叫んだ。
…ああ、もう、何でこうなるんだ………。
「お待たせしました、アスパラバターでぇす」
 店員が俺達の前にごとん、と皿を置く。
 アスパラ?え?