…物心つく前から、僕は人間の友達より沢山の、目に見えないものの友達に囲まれていました。
 それから二十年以上経ってこの稼業をしているのは、その因果というやつなのかもしれないなぁと思います。
 霊媒師というのはあんまり気楽じゃありません…でも、御陵君と出会えたのは、僕にとってこの稼業をやっていてよかったと心から思えた最初の出来事でした。
 御陵君というのは、現在僕のアシスタントをしている子です。
 と言っても、彼はアシスタントの仕事は全然しません。電話も取りません。お茶煎れなんてもってのほかです。
小学校四年生の時に、あるカルト宗教団体にさらわれて以来、10年に渡って教祖の愛人だった彼は、千人の信者さんにかしづかれた生活で、服のボタンのかけ方すら忘れてしまっていました。
 それでも元が頭のいい子なので、ごく短期間で自分の身の回りの事は自分でするようには、なりましたがね。
 彼が、いつになったら僕の仕事を手伝ってくれるようになるのか、今後楽しみですよ。ははは。

 僕が彼と出会ったのは、とある事件の時でした。
 僕はその時さるお嬢さんの依頼で、その宗教に入信したばかりのリストラお父さんの身柄を取り返しに宗教団体の施設に忍び込んだのでしたが、ちょっとドジを踏んで……施設をちょっと破壊してしまったわけです。
 苦手な警察と消防と自衛隊まで現れて、てんやわんやの騒ぎになりました。
 僕はなんとか彼らに見つからずに逃げようとしてそこで、この騒ぎの中、散歩するような足取りで前から歩いてきた御陵君をひとめ見て、恋に落ちてしまいました…

 御陵君はその時二十歳になっていたようですが、僕には17くらいにしか見えなかったのを覚えています。
 カリスマ教祖を十年以上とりこにしてきただけあって、さすがの僕も、うっかり目眩がしそうでした。
 しなやかな体はその道の手練手管に長けていそうなのに、目付きは凶暴で醜悪で。
 僕は心臓の高鳴りを抑えられず、ただただ、彼の眼が嫌悪感丸出しで僕を見返すのを見つめてしまっていました。
 彼は僕を一瞬見ただけで、通り過ぎようとしましたが、僕はそれを許しませんでした。 彼が背を向けた隙に、僕は数珠を飛ばして彼を後ろ手に縛り上げちゃっていました。

 いやー、暴れた暴れた。
 あんまり暴れるので、最後は当て身しましたけどね。
 そして僕は、教団の倉庫にあったビニールシートで彼を梱包すると、隠しておいた車で事務所へ帰りました。
 追っ手が来る前にと、彼が意識を戻しかけたところで、ヤッちゃいました。
 告白すると、僕が男を相手にするのは彼が初めてでした。
 けれども事を終えてみると、最初の死に物狂いの抵抗は何処へやら。険しい眼はすっかり惚けて、頬を桜色に染めながら、僕を見上げていました。
 愛の力ですかねぇ…
「気に入ったよ」
 艶のある唇に微笑を浮かべるその声は、異様に低くドスが効いていました。
 しかし後ろ手に拘束されたまま、仰向けにして一時間強突っ込まれ続けたというのに、彼のアレの方は未だにちょっと勃起している程度でした。
 ん〜。やっぱり未経験者の技術ではイけませんか…
 しょんぼりしていると、彼は脚を動かして僕の方へ起きあがり、両腕を拘束されているので体を使って、僕を押し倒してきました。
 横になれ、という合図でした。
 僕が横たわると、彼は僕の胸に口づけし、そのまま舌を動かしながら下腹部にたどり着きました。
 あぁ…
 肌に触れる彼の舌の感触はねっとり甘くしつこく、やけに赤く見えるせいもあって、とても淫らでした。
 そして彼は、見事に勃ちあがった僕を唇の先でじらすように撫で、僕の疼きが最高になったところでそれはそれは美味しそうにしゃぶり始めました。
 腰を心持ち上げた四つん這いの姿勢は意識されたものなんでしょうか?
 僕を口でくわえこみながら、さらにねだるようにお尻を振っているように錯覚します…
「このまま……オレの口でイくか…?………それとも…中でイくか?…」
 僕がふと我を忘れている隙に、彼はフェラチオを中断していました。
 体をのしあげて僕の胸の上に自分の胸を重ね、僕の上に跨って。
 彼の舌で鋼のように硬くそそり立ってしまった僕の側面を、僕よりひとまわり小さい彼自身でゆっくり擦っていました。
 潤沢な彼の唾液と僕の先走りが混ざり合って、彼の亀頭や側面が濡れています。
 上下に揺れる白いお尻の動きは、まるで僕が犯されているように見えました。
 このまま、彼に擦られて射精しちゃえ、とも思いましたが、僕の答えはこうでした。
「……それより、君をイカせたい」
 僕は下から彼のアレを握って、僕にさらに強く密着させて擦りながら、彼の舌を吸いました。
 互いの舌を絡ませ、どちらの口内に引き込むか先を争うように激しく吸い合いましたが、やはり両手が不自由な彼は僕にかないません。
 ペチャ、ズルッ
 唾液を飛ばして彼はようやく舌を仕舞い、
「上等だ。…なら、激しくやれよ。お前の数珠でオレの首を絞めな」