「は…ぅ」
 体の熱の根源は、ここにあったのだと今更気づいた。足を閉じるのも躊躇うくらい、周囲が燃えるように発熱している。
 多分、いや、間違いなく、この温泉に細工がしてあったんだ。あのマオカラーの変態親父…
「くっ」
 熱さに我慢できなくなった俺は、ビンビンに反り返ったアレを握った。「つ…!」
 途端に鋭い熱が手の平に刺さる。ダメなんだ。自分の手じゃ…
 そう思った時、黒木の手がすっと伸びてきた。つ、冷たい。うっかり気持ちよさに引きずり込まれた。
 アレの先が弄くられ、ぷるぷる震えている割れ目から透明な汁が垂れる。
「っ…ん……あ、ちょ……あああっ!!」
 先走りがアレの側面を滑り落ちるのを、屈み込んだ黒木が顔を傾け、舌で掬い取った。
 柔らかい氷の感触が、俺のアレを直撃する。俺は、爪先が引き攣るくらい感じてしまった。黒木は俺のアレに手を添えると、先端を口に含んだ。
「あ!ああっ!!」
 びく、びくびく、と俺はまるで、水揚げされた魚のように体を痙攣させた。
 咥え込んだまま口内で扱かれ、ズルズルと涎の音を立てて舌の上で側面や下の膨らみがしゃぶられる。腰が抜けるほどの快感で、俺はそれを、おかしな鼻声を出しながら、両手を後ろについて、見守ることしかできなかった。
 アイスクリーム、と言った黒木の言葉がようやくわかった。
 その舐め方は、冷たいアイスをしゃぶっている行為そのまんまだった。
「───美味しいです。とても……」
 俺の視線に気付いて、黒木が上目遣いに囁いた。その顔はいつもの寝ぼけ眼だったが、うっすら紅潮して、俺は新たな疼きを感じた。
「もっと……」
 俺の声に、咥えながら黒木が目だけ上げる。
「唾液、かけてよ…たっぷり……舌で責めて…ぐちゃぐちゃに……して、俺の…」
 俺は黒木の、少しくせのある髪に指を通しながら、掠れた声でねだった……て、オイ俺!
 まただよ。何言ってんだよ?アホかお前は。というか、黒木も素直に従うし!
 カリの部分が冷たい粘膜の壁に押し付けられ、やわやわと舌で唾液をおくられ、俺は意識と血流がソコに物凄い勢いで集中するのを感じた。黒木のフェラチオは、愛撫というより、抜き差しされている感覚だった。俺は自然に、かくかく前後に振るように腰を動かしていた。
「あぁっ、はぁん……っ、い、いいよ…っ」
 おわあああああああ!!
 もう一人の俺が悶絶している。いや、片方も悶絶中だが。男のプライドとか、体裁を気にする俺の方も、発狂寸前だ。
 ずちゅううううううっ、と黒木が強く吸い上げ、俺は絶頂の中、射精を迎えた。
 吐き出した精液を、喉を動かしてごっくごっくと飲み干す黒木。ひえええ。俺は怯えた。射精の衝撃で腰と膝が余韻で震える。力が抜けて、岩場に仰向けに寝転がった。
「──────なんでいっつも俺ばっかり…」
 潤んだ視界が悔しさで曇る。その隣に黒木が腰を下ろした。
「それなら今度は僕のをやってもらいましょうか」
ぅえ、お、俺が?
 驚いて黒木を見ると、寝転がる俺に向かって、胡坐を崩したように足を寛げていた。無論、股間のアレは既にスタンバイ……
 俺はのろのろと体を起こした。不思議と、間近で見ても、嫌悪感はなかった。自分と同じものがついていて、勃起しているだけだと簡単に言えばそうなんだが、しかし。それを口に咥えるとなると、話は別だ。
 俺は黒木をちらりと見た。
 何を考えているかわからない、眠そうな顔は別に恐ろしくもなんともない。それでなんだか落ち着いてきた。よし。
 俺はホモじゃない。絶対にホモじゃない。だけど…だけど…その…えーと。経験だ。人生は。何事も。うん。だから、いいよな…?く・咥えちゃっても…
 俺は目を閉じ、心持ち口を開けて、挑んだ。黒木の内腿に手をかけ、首を伸ばす。
「ちゃんと握ってくださいよ…」
 右手を掴まれ、アレを握らされる。
 うわ、何か他人のアレって…
 そこで俺は目を開け、ちょっと迷う。張り詰めたソレは、目の前に来るとやけに巨大で、ぬるぬるの亀頭が自分の口に入るとなると、急に怖くなった。
「出来ないんですか?」
 黒木の声が、呆れているように聞こえた。だって、やったことないし!!やろうと思ったこともないし!!!
「───唇の先で亀頭を吸うんです。やってみて」
 やってみて、てあんた…。
「それともシックスナインでお教えしましょうか?」
 それはいやだ!!
 その時、背後で物音がした。

「おやおや。やってますね」
「─────────!!!」
 俺は全身の毛が逆立つほど、驚いた。
 大河内が、全裸にタオルで前隠し、という出で立ちでそこに立っていた。

「どれどれ、あたしも仲間に入れてくださいよ」
なぬっ?!!