「どれどれ。あたしも仲間にいれてもらいましょうか―――――」
 
 なぬぅ?!
 まま、まさか、さ・3Pする気ってか?このオヤジ?!
 俺は思わずその場を飛びのいた。
「ああ、そんな。構いませんのに」
「…っつか、あの、あんた…」
 まったく動じない大河内に対して俺はパニック状態だった。
 男同士でフェラチオして、というより、フェラチオし合おうとしている現場に平然と入ってくるなんて。
 普通じゃない。
 いや、そもそも男同士で野郎、否、やろうという俺たちが普通じゃないんだが。
 ん?ということは両方異常ってことで両成敗?………なんでだ!!違うだろ!
 と、俺が混乱しているのをよそに、大河内はずかずかと近寄ってくると俺と黒木の間に座った。
 サングラスを外した大河内は、くたびれたヤギのような目をして、どこを切っても冴えない人相だった。中年の体型らしく腹はたるみ、胸毛や膝、腕に生えた体毛は禿げたように薄い。肌の色もくすんで明らかに体のどこかが悪い感じだ。俺も歳を取ったらこんな風になるのか……やだな〜〜〜。
「立派なものをお持ちだ、黒木さん。素晴らしいなあ、若いって…」
 大河内は感服しながら、まるで焼き物でも吟味するかのように黒木の股間に手を伸ばす。さっきまで完全に勃起していた黒木のそこは、嘘みたいに萎縮していった。
「ホモ!!!!!!」
 俺がわめくと、大河内はどっちが?とでも言うように片眉を上げて俺を見た。
 黒木はというと、何を考えているのかわからないぼーっとした顔で大河内の様子を見ている。

 まさかオヤジもいける口、なんて言うんじゃないだろうな?この節操なし。
 
 大河内は無精髭の伸びた顔を、割り開いた黒木の足の間に近づけていく。
 かくん、と顎が下がるのを見た瞬間、俺はわいてくる衝動を抑えられなかった。
「やめろーーーーーーーーーーーーー」
 俺が絶叫するのに少しずれたタイミングで、
「うぎゃあ」
 と間の抜けた悲鳴が聞こえた。 
 目を見開いてみると、岩場の上で大河内が奇妙な格好で転がっていた。
「数珠?!」
 一体どこから出てきたのだろう?
 黒木のあの、伸縮自在の数珠が大河内の中年太りの肉体を亀甲縛りにして、ギリギリ締め付けていた。
 長い数珠の端を握り締めた黒木は無言で立ち上がり、転がる大河内を見下ろす。
「いけない。手が勝手に」
「う、う、う」
 大河内本人は気が動転しているのか、半分白目を剥いて、うなっている。
 縄目ならぬ数珠目からはみ出た贅肉が、赤く腫れている。
 そして縛りは仰向けの大河内の紫色の股間までぐるぐる巻きにしていた。
 俺はその身に覚えのある痛々しさにうっとなり、目を伏せた。
「大河内さん。この温泉─────何か、仕込んでますね?」
 口の端から涎を流してうんうん唸っている大河内に、黒木が言った。
 大河内は聞こえないふりをして苦しがっていたが、黒木が数珠の縛りを変形させて大河内の毛の生えた乳首を擦りだすと、くすぐったいのかうほほほほ、と笑い声のような悲鳴をあげた。
「うほほっ…そんな…、ふ、普通の温泉ですよう」
「嘘おっしゃい」
「うほほほほほ。あっ…ひぃぃ」
 黒木は薄ら笑いを浮かべながら大河内の拘束された股間に片足を乗せた。
 そのまま踏みつけるのかと思ったら、足の指をくねくね動かして、大河内のアレを揉み始めた。
「ちょっと─────黒木さん、あんた何やってんすか」
 俺の声に黒木は視線を一瞬返し、意地の悪そうな笑顔になると、大河内のアレを足裏で刺激し続けた。
 仰向けになった大河内の息が上がり、頬が赤くなってくる。股間の一物が、足の親指と二番目の指の間に雁首を挟まれて、扱かれて、固く膨らみだした。ジャラッ、と数珠が鳴り、股間の膨張にあわせて拘束がゆるくなる。
 大河内は泣きそうな顔で自分の股間を見ていた。
「あらあら。これはまた。随分と大きくなってしまいましたねぇ……大河内さん?」
 足裏を器用に操りながら黒木は大河内のアレを撫で回す。その刺激は、無感覚と感覚の微妙なところを刺激するのか、大河内は我慢も許されずにひ、ひっ、と撫でられるたびに息を詰めた。
「いい歳をして、いやらしい体ですねぇ。恥ずかしくないんですかぁ?」
「あっ…。は、恥ずかしい…で、ありますっ……」
 おっさん、あんたどこの軍隊だよ…。
「どうするつもりなんですか?この真っ黒にそそり立った肉棒のたかぶり。ごらんなさい。まるで岩清水のように蜜が溢れてくる─────」
 てめえもそのセンテンス、どこのポルノ小説だ?!