セヴェリエは、肉体での抵抗は断念したが、修道士の精神だけは汚辱されるまい、と必死で声を抑え、祈りの言葉を心で唱え続けた。
マキュージオは、そんなセヴェリエをなんとしてでも陥落しようと、屈辱的な仕打ちを続けた。しかしセヴェリエは頑なだった。最後は目を閉じ、神への祈りと、マキュージオの罪の許しを祈った。…それが、最後の記憶だった。

 セヴェリエは、おもむろに自分の腕を動かしてみた。 マキュージオが目覚めるかと思ったが、その瞼は閉じたままだった。  次に、足を動かしてみた。 と、そこで初めて、セヴェリエは違和感に気付いた。

(なにを…!!!)

 自分の足の付け根あたりから、首筋に、痺れが走る。続いて熱を帯びた痛み。

『…ああぁっ』

 喉の奥から、低い呻きが這いずり出す。
 錯乱し、引き抜こうとした。が、付け根に埋め込まれた杭は、セヴェリエの意に反して猛々しく膨張を始め、セヴェリエの気を狂わさんばかりに背筋に激痛による痺れを何度も放つ。 耐えられなくなり、セヴェリエはマキュージオの腕を払いのけ、声を殺すために自分の口を覆った。…が、その手は引き離された。

『あっ』

『お目覚めになられたか』

 マキュージオの声が耳元でささやいた。その声色とは裏腹に、セヴェリエに打ち込んだ己の杭を、さらに奥深く埋めようと押し進めてくる。

『はぁっ………っっ。はぁっ、あ、ああああっ』

『先程は…すぐに気を失われてしまった………今度は、……今度はわたしの声をよく聞かれることだ……』

 マキュージオの声も、だんだんとうわずっていく。セヴェリエは顔を見られまいと必死でそらす。しかし、その耳さえ燃えるように紅潮していた。そこへ、蛭のようなマキュージオの舌が愛撫する。びく、とセヴェリエが全身を痙攣させる。

『…この屈辱から早く逃れたければ、わたしの気をやってしまうことだ。……わたしの精を、すべて搾り取ってしまえばよい。さあ……やり方は教えたはず……そうしなければ、そなたはいつまでも…、このまま…』

 マキュージオは、俯せに組み敷いたセヴェリエの半身を抱き上げ、杭を差し込んだまま、軽々とセヴェリエの足を持ち上げ、互いの体をむき合わせた。 そして今度は、自分が仰向けになり、倒れかかってくるセヴェリエの半身を下から支えた。

(そんな……そんな…)

 一連の動きで体の芯が激しく擦られ、セヴェリエの視界は乱れた。 やっと目を開けると、自分がマキュージオの体の上に跨っていることに気が付いた。 羞恥と怒りが全身を駆け巡り、セヴェリエは暴れた。しかしその手を捕らえられ、下から突き上げられる。押し上げられ、うねり、揺さぶられ、セヴェリエを無力にした。

『さあ、励まれよ…』

 マキュージオの瞳が、濡れたように輝いている。 美しい形の唇がわななき、息が吐き出される。それを見て、セヴェリエは自身の“杭”が疼き出した。思わず、マキュージオから目を逸らす。しかし目を閉じると、今度は体の後ろから、熱い波が押し寄せてきた。 閉じた睫の間から、涙が滲み出る。目は天井を見上げていた。

『ふぅっ…ああ…』

 セヴェリエは肩を大きく揺らし、マキュージオの胸に手をつくと、腰を持ち上げた。 引き抜くつもりだった。が、腰が浮いた途端、新たな快楽が吹き荒れた。

『…んんっ!く!!』

 声を抑える。すると、上体が前へ傾く。抜きかけた杭が、ぐっと内部を抉る。

『はぁ』

 すると今度は、すすり泣くような鳴き声。歯を食いしばり、体を後ろにそらすと、また、深々と杭を呑み込んでしまう。セヴェリエは、どこへも逃げられなかった。

『そうだ…その調子で………、わたしを導いて…いけ…』

 マキュージオの手が、セヴェリエの頬に触れる。
 セヴェリエの意識はふただび薄れいでいった。
 引き裂かれた服は、破れたままその腰に纏ってはいたが、もう修道衣とは呼べないほど、汚されていた。そして裸の胸や背中や尻は、おびただしいほどマキュージオに吸い付かれ、歯を立てられていた。
刃の丘の修道院