その胸の上で、ロザリオが揺れている。
その存在だけが、セヴェリエの沈黙の誓いと信仰心を見張っていた。
『はぁ…』
マキュージオの口から、官能的な吐息が漏れ出した。セヴェリエの杭は立ち上がり、絶頂に向かおうとしていた。マキュージオは、下からセヴェリエを揺さぶりながら───片手でセヴェリエの自身を握り締め、扱き始めた。
『っ……!!』
セヴェリエは意識を取り戻し、マキュージオの動きを制しようとした。 いきなり手を掴まれ、引きはがされそうになったマキュージオは驚いた。
『どうした?』
動きを止める。セヴェリエの視線の先には、暖炉の上の十字架があった。救世主の目は、まっすぐにセヴェリエを見下ろしていた。
『…………』
『…そうか』
マキュージオは呟くと、体を起こした。十字架を見つめたまま呆然としているセヴェリエの肩を抱き、次に片足を持ち上げた。杭が少し抜かれ、ふたたび差し込まれる。 セヴェリエの目は、うつろだった。堪らずに、マキュージオは唇を重ねる。 重ねたまま、マキュージオはセヴェリエの中に精を放った。
セヴェリエも同時に、果てた。それを見届け、マキュージオは深い息を吐き出した。
『………じき、朝日が昇る。わたしはここを離れ、西へ向かう。かつての友が、西の砦を護っている。蛮族どもが向かってくる前に、加勢を得られれば、ふたたび戻ってこよう』
そして、もう一度口づけると、セヴェリエから体を一気に引き抜いた。
セヴェリエは、崩れ落ちるように意識を失った。
それから───次にセヴェリエが目を覚ました時こそが、本当の夜明けだった。 暖炉は燃え続けていたが、マキュージオの姿は、今度こそ消えていた。セヴェリエは寝台に寝かされ、夜着を着せられ、毛布を掛けられていた。 体の芯の鈍い痛みに耐えながら、セヴェリエは寝台を下りた。のろのろと、戸口へ向かい、戸を開ける。火薬の匂いのする空気に混じって、白みはじめた空の彼方に、騎士の走り去る蹄の音がかすかにきこえるようだった。