「んっ、ん…は、あっ、あ、あ!…ああっ」
 ビクッ!!と背筋が強張り、俺は射精した。 5回連続ともなると、出るものもなくなってくるようだ。衝撃のわりに、出てきたのはしょぼいもんだった。 しかし、尻の中の振動はそれでもまだ俺を解放しない。促すように強くかき回され、俺はティッシュで拭くのもそぞろにまたアレを握る。
「くそっ…」
 勘弁してくれよ。
 舌打ちながらまた、しごく。
 時刻は深夜二時をまわっている。
 今夜も寝不足になるな…。俺は自嘲した。 そして、ズコズコと肉壁を擦られてよがり声をあげた。


 黒木柳介という霊媒師によって、俺は化け物を、腹に埋め込まれた。四日前の話だ。 見かけはエイリアンの胎児そっくりのその化け物は、以来毎晩、俺の腸の中で伸縮運動をして、俺のアレを勃たす。
 で、出し尽くすまで抜かないと大人しくならない。…一体どういう生態なんだ。
 動きはあのバイブイブレーターそっくりで、俺は毎晩AV顔負けの痴態を演じさせられている。
 俺はホモの変態なんかじゃないのに。
 それもこれも、すべてはあの野郎のせいだ。
 化け物を埋め込んだ犯人である黒木とは、連絡が一度たりとも繋がらない。 名刺にあった携帯の番号は、いつかけても留守電だった。 おかげで俺は化け物がいつ何時、腹を喰い破って飛び出してくるかという恐怖に怯えながら、気が気でない毎日を過ごしている。
 俺のそんな異常は、周囲にも感付かれていた。
 化け物のレイプは幸いにも夜しか行われなかったが、俺はすさまじい食欲に苛まれるようになり、日に何度も物を食う俺を、みんなだんだん避けるようになってしまった。 しかも山ほど食っておきながら、四日中まったく排便がない。 腹の化け物が食ってやがるのかなんなのか。 顔色はすこぶる悪く、寝不足で毎日頭がぼーっとしていた。

………俺、死ぬかも。
 五日目、朝日の差し込む部屋で雀の声を聞きながら俺は思った。
 ところがその日の午後。
 俺は奇遇にも、あの黒木と再会した。
 俺の仕事というのは広告屋で、今はデパートの看板をやっている。 担当は制作なのだが、出張中の先輩の代理で、この小ハゲ部長と新築の駅前ビルに打ち合わせに向かった。 小ハゲは、四十前にして若ハゲだ。正式名称は小濱というが、俺たち同期の間では小ハゲで通っている。(本人にはバレてない)
 打ち合わせは夕暮れに終わり、俺達は駅に向かった。小ハゲの、
「やっぱ今時分はシータクだと返って渋滞巻き込まれっジャン!」
 とかいうキンキンする喋りに憂鬱になってふと反対側のホームに目をやった。 人混みの中に、ひょろ長いぬぼーっとした奴がいる。と思ったら、
「あの野郎」
 俺は口走り、気がつくと小ハゲのとめる声も聞かずに走っていた。 しかし。全力で走ったにも関わらず、俺がホームに駆け上がった途端に、電車は動き出してしまった。携帯をかける。…留守電だ。何なんだよ、畜生!!
 俺はがっくりヘコんで、階段を降り始めた。 もうだめだ。オナニーのし過ぎで、ぼーっとして、幻覚まで見えるようになった。
「それ。ダテですか」
「あぁ?!」
 突然後ろから声を掛けられ、俺は不機嫌に振り返った。 するとそいつは俺の眼鏡を触りながら、
「あ、違いますね」
「おまっ…」
 黒木。 俺は掴みかかる勢いで、寝ぼけ眼を睨みつけた。
「ご無沙汰しておりました」
 ぺこりと頭を下げる。
「…あんた、なぁ。この数日間、俺がどんだけ……ていうか携帯、何で繋がらねえんだよ!」
 思わず怒鳴る俺。そして即座にはっとした。 周りの通行人が、あからさまな目を向けていた。 必要以上に至近距離で怒鳴る男と怒鳴られる男。
…違うんです。皆さん、誤解です!
 たちまち真っ赤になって固まる俺を、黒木はひきずるようにどこかへ連れていった…

「すみませんねぇ。あの子のことを調べてたら、思いの外時間がかかっちゃいまして。
でも、おかげで解決策は入手してきましたから。安心してくださいね?」
「あ、うん…」
 彼の、相変わらずの腰の低い、しかし一物ありそうな独特な物言いを、俺は虚ろな返事でかえす。
クチャ、クチャ。 ジュル…!
「ぅあ…っ」
 吸引されて、のけぞった。 その拍子に、背後のタンクに頭がゴツッとぶつかる。痛かったけど、それどころではなかった。
「大丈夫ですかぁ」
 口の端に垂れた白濁を指先ですくって嘗めながら、彼が俺を見上げる。 俺は肩で息をしながら頷いた。 すると彼はまた、俺のアレを口に含んだ。柔らかくてグジュグジュした舌が、アレをねぶる。
「ちょっと…もう……やだ…っ。あハっ」
 連日のオナニーでは、俺は声を出すのが当たり前になっていた。 それもイヤにクンクンした犬みたいなよがり声だ。それでも家なら、自分一人だから平気だったが、この状況は恥ずかし過ぎた。