畜生…!
 いくらもがいても、彼の手を離すことができなかった。 俺は、とうとう切迫して、とんでもない思考が浮かんだ。
「俺の…」
「はい?」
「俺の、体じゃ……駄目、ですか」
 うわあああ〜!
 な、何俺。何言ってんだよ!
 俺は、言ってしまって初めて錯乱した。彼は一瞬目を丸くしたが、ふっと目を細めて笑った。
「お気持ちはありがたいんですが、お客とはそういう関係を持たない主義なんです…それに、恋人に悪い」
「あ…」
 そうですよね。…じゃなくて!今までさんざん俺をいたぶっておいて、何なんだよそれは!!
「じゃあ今日は、とりあえずこれを頂いて。明日にでも残りを受け取りにまいります…それで、いいですよね?」
 全然いいわけなかったが、俺は頷いた。 そうするしかなかった。 彼は俺のアレから手を離すと、俺の手を引いてかわりに握らせた。
「ん…くっ」
 情けないが、その途端に俺はしごきはじめた。 前かがみになり、尻をガクガク震わせる。 俺の全神経が、射精に集中していく。 顔を赤くして、速い呼吸で音を立てながら乱暴にしごく俺を見て、
「大した好き者ですねぇ」
 彼の声が冷たく響いた。 俺は急いで片手をトイレットペーパーに伸ばした。が、巻き取る前に、
「はぅ…!」
 白濁が勢いよく飛び出した。 一滴の飛沫が、立ち去ろうとして振り返った彼の頬にかかった。
 それを彼は黙って指先で拭い、俺の目を見つめながらその指を吸った。
「しばらくそこを動かない方がいいですよ。数日分の便が、排出されますから……」
 な・なに〜?!
 俺は立ち上がろうとしたのを慌てて止めた。
 てっきり、ヨダカヘビの奴が…と思ってたのに……
「じゃあ、僕はこれで。明日また」
 バタン。
 あっさりドアが閉められた。
 俺は我に返り、自分の体の惨状に愕然となった。ヨダカヘビのねばねばした粘液が体のあちこち、特に尻の穴とアレにまとわりつき、その上汗と精液がベチャベチャだった。 しかも、壁や床にも汁やら何やらが飛んでいた。
「……」
 俺は言葉もなく、それらを見て、足下に落ちていた空の財布を取り上げた。 よく考えてみたら…給料日前だった……。

 やがて、腹がゴロゴロと唸り始めた…。