先程の新築ビル。公衆トイレの個室だが、女性用だ。 テナントはまだ少ないとはいえ、下の百貨店の客がいつ入ってくるかわからない。 しかしそんな状況下にありながら、俺のアレはまたしても反り返って…クラシックのBGMが静かに流れる 女子トイレで、便座の上で下半身を晒して、男にフェラチオされているわけだ。
…ピンクのタイルや天井についた花の形の照明を見ながら俺はまたイッた。
「はぁ、はぁ…はぁっ」
 顔をあげた彼の額に手を当て、俺はつっかえながら、
「んっ…もう、か、勘弁してくれ。これ以上は」
「出ない?」
「っ…」
 出ないし!それよりだ。
「会社に、戻らないと」
「ああ…そうなんですかぁ。じゃあちょっと、スピードアップします」

「えぇ?!なんで?何、スピードアップって。黒木さん、黒木さんっ」
 意味がわからず混乱する俺を振り切り、彼は俺のネクタイをゆるめ、シャツをはだけさせた。 そして俺の両手を広げて背後のタンクに押さえつけたかと思うと、その顔を俺の胸の上にこすりつけた。
 チュウ…
「いっ…いてぇぇ!」
 何で乳首吸ってんのこの人!? 俺は驚くやら痛いやらで、体をよじった。
「こらこら。大声あげちゃダメでしょう」
「痛いっつってんだろ!!やめろよ変態っ」
「痛い痛いも、好きのうち…」
「意味分かんねえ!」
 彼はふたたび俺の乳首を口に含み、吸いながら歯を立て、舌で舐めまわしはじめた。
 ヒリヒリするし、快楽とはほど遠い悪寒しか感じない。
「ん〜。おかしい。僕の恋人とは大違いだ」
 彼は俺の反応を見て、不服そうだった。 あんたの恋人と俺を一緒にするなっつの!
「待てよ。こうしたらどうだろう…」
 彼は呟くと、また俺の乳首を吸った。
「いっ」
 呻く俺。彼はそれから俺の手を押さえつけていた右手を離し、俺のアレをつかんだ。
「んぁ」
 俺はびくっと体を震わせた。彼の手がしごき始めるのに合わせ、乳首がなぶられはじめた。
「あああっ!」
 突然、快楽が襲ってきた。 彼を制しようと、その腕を掴んだが、力が抜けた。
「静かにしてください。塞いじゃいますよ」
 彼が笑いながら俺の顔をのぞき込む。
…鬼畜………!

 アレを擦られながら乳首を吸われるだけで、今までの痛みとくすぐったさが快楽に反転してしまった。
 何て言うか、彼にもっと触って欲しい、いたぶって欲しい、と底無しに求めたくなるような奇妙な感覚だ。 俺は声を殺して、生まれて初めての乳首の快楽に喘いだ。 アレも揉みほぐされて、下半身もすっかりガタガタだ。
「ハァ」
 ふと意識が霞み、俺は首を振った。 息をついた時、ふと腹の中がゴロゴロ鳴りだした。
…なんだ?
 目を開けてみると、彼にも聞こえたのか、顔をあげ、身を引く。 そして俺の下腹部を見つめる。 おもむろに、俺の下腹の脇がポツ、ポツと盛り上がった。
…化け物が、目を覚ましたのだ。
「お出ましですね」
 彼はじゃら、と数珠を取り出し、右手に巻き付けると上着のポケットに突っ込み、低い声で念仏を短く唱え、
「この時を待ってました」
「……え」