その様子は淫らでもあったが、なぜか勇敢にさえ、映って見えた。
…フェルマールの言葉を、全て信じているわけではないのだろう。国家が滅びるのが目に見えた今、セロドア自身も自分のことをよくわかっているに違いなかった。
ここでマキュージオを見殺しにしたところで、その運命は変えられぬ。
それなら──────それならば、決められたさだめの中で、己の役割を、さだめを決めた神か、あるいはフェルマールの期待以上に、演じてみせようではないか。
マキュージオがそんな妄想をしていると、ふとセロドアの両手が肩を抱き寄せてきた。胸の下から、セロドアの速い鼓動が伝わってくる。セロドアは、マキュージオの首に腕をまわし、耳元に口を寄せた。
声は震えていたが、意志のはっきりした言葉が聞こえてきた。
『マキュージオ。……マキュージオ。──────そなたが…薬で狂わされているのは知っている。……奴の……狙いは……この、仕組まれた陵辱で……私と、そなたを引き裂くつもりなのだ……。私が…犯されたのを恥じてそなたを殺すか…あるいは……犯された事実を民に晒して私が処刑されるか……。そなたが先か…私が先かは……わからぬが…生き延びた方が、奴に一矢報いよう……どうだ…?』
最後にふ、と笑いが漏れた。
マキュージオは、セロドアの顔を見た。
フェルマールに盛られた薬は、マキュージオの精神を強力な力で抑え込み、野獣に変えようとしていたが、その一言は一瞬だけ、マキュージオに光りを与えた。
『………御意』
そして、その言葉が、マキュージオに残された最後の理性だった。
マキュージオは、セロドアの両足を無理矢理に開くと、菊座を突き破る勢いで、猛り狂った杭を押し込んだ。
セロドアは絶叫し、押し込められた場所が鮮血を噴き出した。流れる血潮と、傷付けられて爛れる粘膜が、マキュージオの狂気を煽る。
快感ではなく、虐待に喜びを感じた。
もはや目の前にいるのは主君ではなかった。家畜と変わりないように見えた。マキュージオは腰を強く何度も打ちつけながら、さらにセロドアの腰を揺すった。さらなる悲鳴と、苦痛の表情を求めて、角度を変えながら、奥を抜き差した。
足首を掴み、体を横倒しにする。
こちらを見返す、恐れおののく眼差しが、さらにマキュージオを刺激した。後ろを向かせ、髪を鷲掴み、犬の格好で突く。吐精が近づくと抜き、その尻にぶちまけた。
セロドアは、いつまでもずっと泣き叫んでいたが、最後はその声も枯れ、気を失った。マキュージオは、セロドアが失神した後もその体を嬲り、何度も吐精した。そして、疲労が薬の効果を凌駕し、マキュージオも気絶してしまった。
フェルマール達がふたたび姿を現したのは、その翌朝だった。
そして、マキュージオが眼を醒ました時には、セロドアの姿はすでになかった。
王の責務として、戦場へ向かったのだった。
マキュージオは身柄を釈放された。とは言っても、エリクシールを盛られ、体が麻痺した状態で荷馬車に乗せられ、北の山奥に打ち捨てられるのが、フェルマールの指示であった。
マキュージオは体を荒縄で拘束され、崖から突き落とされることになった。
それを行うのは、キリルである。他には従者はいなかった。
『さらばだ。業星のマキュージオ』
崖の縁から転がされそうになったその時、マキュージオは渾身の力でキリルに体当たりした。
『…うわぁっ』
キリルは仰向けに転倒したが、すぐに体勢を起こし、マキュージオに襲いかかった。
首を絞められ、頭からじわじわと縁の外へ追いやられる。
小柄なキリルでも、力は割合に強かった。
窒息しながらも、マキュージオは縄の下で藻掻き続けた。
──────ガラッ。
ふと、頭の下の岩がひび割れた。次の瞬間、
頭の下の岩場が大きく砕けた。
『!!!』
ぐらり、と体が崩れる。落ちる。そう思った時、
『わ───────』
マキュージオの体に馬乗りになっていたキリルが、マキュージオの上を滑り落ち、まっさかさまに転落した。
ガラガラガラ、とキリルにつられて細かい岩の破片が谷底に消えていく。
マキュージオは体をよじり、崖の縁から身を遠ざけた。
はぁ、はぁ、はぁ。
背中を冷や汗が流れた。そして、歯を食いしばって気を奮い起こすと、縄をとく手立てを考えた。