セロドアは再び仰向けに寝かされ、腰だけを持ち上げられた姿勢で、管に突かれ続けた。
 口への挿入も、ひっきりなしに続き、セロドアは顔面を絶え間なく汁で汚しながらも、爛れた舌で管をしゃぶった。
 そして─────────ふと、手の自由を感じ取ったセロドアは、傍らで蠢いている管をぐっと掴むと、管のなかでもとりわけ太いものが三本がかりで抜き差ししている菊座のほうへ引き寄せた。しかし、セロドアのそこは、出血はとまっていたが、もうそれ以上押し広げることは無理だった。
 が、セロドアは淫靡に笑うと、
『あ…─────────っつう……』
 握り締めた管を、激しい抜き差しが行われている己の尻に捻じ込み始めた。捻じ込みながら、管を咥えた頬をすぼませ、舌を絡める。
『んっ……ん、はあっ、ああっ、あ…ん、あ、────────や!嫌だあっ』
『おやめなさい。陛下────────それ以上は』
 その手首を取り上げ、フェルマールが一喝したが、セロドアは嫌がり、幼い子供のようにもがいた。
『欲しいのだ─────────それが…!』
 手を伸ばし、無駄とわかるや別の管に手を出そうとする。それを見計らい、フェルマールが呪文を命じると、すべての管が一瞬で消えうせた。
『───────……ああああーっ!』
『少々、過ぎたようですな』
 全身の快感を急に取り上げられて、セロドアは泣き叫びながら地面を這いずり回った。
『どこだ…、どこへ消えた』
『すっかり正気を失っておられる…』
 フェルマールの裾にすがり、セロドアは意味のわからぬ恨み言を吐いた。
 そこへ、水晶の杖が一振りされると、セロドアはふと意識を失い、その場に倒れた。
 やがて、強い眠気が襲ってきて、セロドアは意識を失った。

 フェルマールが去って、日が過ぎた。
 その間に幾度か交戦があったが、国王軍の兵力はますます衰えた。
 リラダンの緑の連合軍は、東の都を護る城壁の数リーグ手前に拠点を築き、国王軍の攻撃を待ちかねていた。もし今、緑の連合軍に攻め入られれば、国王軍は一日で全滅するだろう──────それが決して妄想ではない証に、緑の連合軍からの攻撃は決して行われなかった。
 国王軍のジラザーン伯爵の息子ジアコルドは、分隊を連れて国内を巡り、兵力の確保をはかっていた。
 しかし敗色濃厚な国王軍の傭兵となる者は少なく、また思うように使える人材も求められなかった。
『援軍はまだか』
 ふたたび会議となった天幕で、ジラザーン伯爵は苛立ちを露にした。
『フェルマールは何をしておる。異国の者に任せるなど、そもそも間違いだったのではないか』
 セロドアは、それを沈黙して聞いている。顔色は蒼白で、げっそりとやつれ、覇気は微塵もなかった。
 会議の席には、ジラザーン、アーシュラスの二人だけが出席していた。
 南の軍の隊長は、すでに戦死していた。
『王よ』
 ジラザーンが声をかけると、セロドアは夢から覚めたような眼差しで顔を上げた。
 その向かいに座ったアーシュラスが口を開く。
『陛下。この期に及び、言いかねていたことを申し上げます。…マキュージオは今、いずこに居るのでしょう。謀反人として投獄されたが、解放されたはず』
『マキュージオ?』
 ジラザーンが訝しげに訊ねた。アーシュラスが答える。
『ヌールの騎士団団長マキシアヌの子で、ヌールの騎士団をかつて率いていた男です。私の古い友人でもある…その強さは軍神の加護を受けており、ひとりで百の兵とも渡り合えるでしょう───彼が戻ってくれば』
『…しかし謀反人ならば、我々の味方にはつくまい』
『ですが…』
 アーシュラスの反論を聞きながら、セロドアは脳裏で何度も繰り返していた。
 マキュージオ。マキュージオ。マキュージオ
 その名前に対する記憶が、ぼんやりと霞んでいる。逡巡していると、天幕の入り口が慌しくなり、一人の兵士が転がり込んできた。
『会議中だぞ。何事だ』
 ジラザーンが怒鳴る。
『も、申し上げます。たった今、ヌールより伝令。─────────先王ダミアロス様、危篤のご容態です』
『何…』
(父上が…)
 思わずその場に立ち上がったセロドアを、一堂が見た。
最後の王