と、ベッドを指さす。
「あの…」
 俺は戸惑った。が、彼の目は真剣だった。
 俺は若干の疑問を感じながらも、素直にベッドに横になった。
 彼は俺を見下ろして、ぶつぶつと呪文のような言葉を繰り返した。
ぎし、とベッドが軋む。彼は俺の体の上に被さるように膝と手をついた。無言で、俺の両手をバンザイさせるように上げ、 頭の上で交差させた。
 その手首に、先程の数珠がぐるぐる巻かれて、
「ちょっ…!何す…」
 俺はやっと抗議した。
「何って、除霊に決まってるでしょうが」
 ひょうひょうと彼は答えながらも数珠を巻き終えた。
 しまった、と思ったが遅かった。
 数珠は渾身の力でもびくともしない結び方で、俺を縛り上げていた。
 おそるおそる、彼を見上げた。笑っていた。
「あんた、霊能者じゃないのか!ざけんなよ、この」
 軽く足を蹴りあげた。
 それをかわして、彼は俺の胸の上に自分の胸を重ねるようにのしかかってきた。
「霊能者さ。正真正銘のね」
 寝ぼけた目の奥が俺を映していた。
 鼻先に息を感じた。と、思ったらキスされていた。
「うぅ!ん、む…!うーっ!」
 舌がダイレクトに入ってきて、口の中をかき回した。
 驚くやら、混乱するやらで俺は塞がれながらわめき散らした。
「この、変態!」
 口から涎を溢れさせながら俺は怒鳴った。冗談じゃない。
「霊能者だといってるでしょう」
「アホか。こんな除霊があるわけ…」
 言い終わらないうちに、またキスされた。畜生、こいつ絶対殺す!
 俺は頭の中で、こいつをぶっとばす策を練り始めた。
 できれば平和的に解決したかったが、彼が三度目の、かなりしつこいキスを終えたのを見計らって、俺は下からの膝蹴りを試みた。
「この、ホモ霊媒師!!」
 蹴りは彼の脇腹に見事ヒットした。
 う、と呻いて体勢が横に崩れ落ち、
「…ってて」
 俺は手首の拘束を見上げた。
 数珠は手首に何重も巻かれている上、どうやってなのか両肘から上腕までに巻き付いていた。
 それが、ほどこうと腕を少し動かしただけでがっちり締め付ける。
 一体どういうことになっているのか……というか。…どれだけ長い数珠だってんだよ!
 そんな俺の反応に気づいた彼が、また俺の上に乗っかってきた。
「意外とやりますね…僕の好みだなあ」
「はぁっ?!」
「でもちょっと今のは痛かったかなあ。足も縛っちゃって、いいですか?」
 と言いながら上着のポケットから数珠を取り出して見せた。
こいつ、一体いくつ持ってるんだよ。
「いいわけ、ないだろバカ!離せよ!!大声出すぞ」
「ああ、声はご遠慮なく」
 至極マイペースに、彼は俺の足首両方に数珠を巻く。
俺は抵抗したが、彼が拘束した俺の両足首を持ち上げて、足の間から首を通すように俺の膝裏をその肩にかついだ瞬間、無力を感じた。