俺なりの知識でも、男同士のセックスがどんなものかは見当はついているのだ。
…自分のケツの穴にアレが入るなんて、まっぴらだ。
「痛くだなんて…とんでもない。優しくします」
 彼は甘い声で囁いた。
 優しくします、っていうのがイヤに気になったが、俺はその言葉どおりを受け取るように、頷いた。
 彼は一旦俺の両足をおろすと俺の横側に移動し、俺の履いているデニムに手をかけた。
 ボタンを外し、ジッパーを下ろそうとしたところで、怒張したアレが引っかかった。
 それで思わず俺の腰がひけるのを抱き止め、彼はそっと指先で撫でるようにジッパーを引き、染みでべとべとになったパンツの下からパンパンに腫れ上がったアレをむき出しにした。
 そして、ニヤッと俺に笑いかけたかと思うと、その口で何の躊躇もなく俺のそこをくわえこんだ。
 温かい唾液がたっぷりと流れ込み、舌が俺のアレをねぶりだすと、俺は体がぶるぶる震えるほど感じてしまい、
「あはぁ」
 と、ふぬけな声を洩らしてしまった。
 それに調子づいたのか、彼は頬をすぼめ、ジュルジュルと音をたてて吸い込みはじめた。
 締め付けられて、腰に快感が走った。
 彼の舌の動きがまた巧みで、舌先でチロチロと先端をいたぶったり、裏筋を何度も上下したりと、俺を完全にとろけさせてしまった。
 気持ちいい、と素直に思ってしまった。
「…気持ちいいですか?」
 ふいに彼が顔をあげた。
「…うん……凄く」
 俺は薄目で答えた。
 さっきから腰が震えっぱなしだ。
 大きく息を吐き、目を閉じた。
 再開したフェラチオは、いよいよクライマックスに向かうように、強力な締め付けを呈してきた。…と思った。
 じゃら。
 もの凄くイヤな感覚で俺は目を開けた。開けたまま、硬直してしまう。
 目に映ったのは、数珠が巻き付けられた俺の、俺の…
「僕たちはこういう遊びが大好きでしてね…」
 懐かしそうに遠目になる彼。
 愕然となる俺の目の前で、服を脱ぎはじめた…おいこら!
「っあ…い、痛えーっ!何で、こんなっ」
 巻き付いた数珠が、アレの皮に食い込んで、肉がちぎれそうだった。なのに、先端からは先走りが絶え間なく流れてプルプルしていた。 息苦しくて堪らない。涙が出そうだ。 彼はのんきな顔でジャケットを脱ぎはじめている。
「うっ…うう〜」
 俺は涙を流し、恨めしい目を彼に向けた。と、その時。
 どこからか携帯の着信音が流れてきた。
 …トルコ行進曲。
 どういう趣味してんだよ。
「はい」
 彼はジャケットから携帯を取り出した。
「お疲れ様です。今お客さんの所なんですよ。ええ…はい…あ、蕎麦で結構。はい。はいはい…」
 そんな場合じゃねえだろ!と俺は怒鳴りかけたが、彼は片手の携帯に話しながら、俺のかたわらに腰掛け、空いた手で、俺のアレをしごきだした。