俺は叫んだ。化け物はそれに驚き、彼の手から逃げようと、こともあろうに俺をめがけて突進してきた。
 俺は拘束されたままそれをかわそうと身をよじった。が。
「あ」
 彼が身動きするところで、化け物は、俺の、丸出しになった尻の間に潜り込んだ。
 しゅるしゅる音がして、尻の肉を無数の触手が分け入ってくる。
「あ、あーっ!やだ、やだーーっ!!黒木さん!黒木さん、助けて!!」
 発狂せんばかりに俺が助けを求める間にも、化け物は俺のすぼまりをずんずん拡げ、中へ中へと押し入る。
「あーーーーっ」
 ぐちゅっ、ぐちゅぐちゅ。余りの痛みに俺は痙攣を起こした。下腹が、ゴロゴロ音を立てる。異物感が、俺の体内を蠢いている。
「…入っちゃいましたねぇ」
 俺のそこをのぞき込み、彼は言った。
「……っ、何とか、しろよぉ」
 マジで気持ちが悪い。化け物は、俺の腸にいるらしく、さっきからその辺りがひくついているのがわかる。
「何とかって…」
 彼は困惑しながら、俺のすぼまりに、指を差し入れた。
「いってぇ!!」
「だめですね。腕でも突っ込めたらいけそうなんですけど」
「う、腕?!冗談じゃ」
「それか腹を切開」
「……何とかならないのかよ!あんたのせいなんだぞ」
「わかってますよ…ん〜。でもまあ、大丈夫でしょう。そのうち便と一緒に出てくるかもしれないし」
「蟯虫じゃねえだろ!」
 彼は俺の体から数珠を外しながら、
「…まあ、実を言えば僕もこれのことはよく知らないんです。一昨日、地下水路で仕事した時に拾ったばかりでね。だからちょっと調べないと…とりあえず、痛みはないんでしょう?」
 数珠を外され、自由になった腕は痺れきっていた。俺はそれをさすりながら、
「……ない」
「よかった。それなら僕、今から帰って急いで調べてきますから。…あ、何かあればこれ」
 股間と足の数珠を解いた彼は、俺に名刺を差し出した。
 俺が受け取ろうと手を伸ばすと、
「んっ…」
 キスされた。
「イク時のあなた、最高でしたよ」
 唇を離しながら、囁かれた。
「ふざっけ…」
 んな、と俺は拳を出そうとして、硬直した。
「ひっ…う…ひっ」
 しゃくり上げるように呻く。
「どうしたんですか?そんなに感じました?」
「バカ!違うっ…なんか…変…あ」
 おとなしくなったと思っていた化け物が、活動を始めたのだ。しかも、さっきと様子が全然違う。俺の腹の、ちょうどアレの位置のところを、触手がつついている。
 つつきながら、腸内で膨張しはじめる。
「あっ…」
 生まれて初めての感覚だった。内部からしごかれているような、くすぐられているような。
 俺は彼が見ているのも構わず、悶えはじめた。
 化け物は、俺の腸内に居座り、不穏な動きを続けている。
 そのせいで、俺の腰は小刻みに震えた。内部がブルブル揺すられ、すぼまりの辺りがどんどん熱くなる。
 俺は下半身をむき出したまま、ベッドの上にうずくまっていた。シーツを握りしめ、
「んはっ…」
 息を吐く。
「大変そうですねぇ」
 真上から、彼の声が降ってきた。見れば帰り支度のついでのように、壁にかけた俺のダウンのポケットをまさぐっている。
「何してんの…」
 俺は尻を震わせながら、声をかけた。
「今日の分の報酬ですよ…あ、あった。……うん、とりあえず今日はこれだけ頂いていきます」
 俺の財布から万札を抜き、上着にしまう。俺は唖然とした。
「は…?なんの、報酬?」
「トンネルで憑いた霊は祓っておきましたんで。その、お尻の中に入っちゃったやつは後日ってことで、よろしく」
 いつの間に…ていうか、俺は?
「俺はどうなるんだよ!」
「落ち着いたら、電話してください。とにかく今はどうしようもないし、僕も早く帰らないと」
「待ってよ、ちょっと!!」
 彼はそそくさと玄関に向かう。
 俺は追いすがることも出来ず、ケツの振動に意識がもうろうとしてきた。
 すると彼がまた振り返り、戻ってきて、俺の前にかがみ込むとアレを握り、擦った。いつの間にか半勃ちだったそれが、刺激で膨らむ。 そして彼は俺の手をとりあげると、俺自身を握らせ、
「応急処置」
 そう言い捨て、今度こそ振り返らずにドアを開け、去ってしまった。
「っの…」
 俺は片手でアレをしごきながらという、みっともない格好で後を追おうとする。痴漢されて、変な物を入れられ、金を盗まれ。この鬼畜野郎!そう言いたかったが、実際口に出たのは、
「き……気持ちいい…あ、んっ」
 後ろの振動とダブルで襲ってくる快感に、俺はよがることしかできなくなっていたのだ。
 猛烈な勢いで擦る俺。
 たったひとり取り残された部屋で、大きな喘ぎ声を出しながら、射精した。