「………」
 ごく、と唾を飲み下しながら俺は彼を見上げた。
「あらら。急に大人しくなっちゃいましたね」
「…っていうか……あんた、俺に何、する気なんですか…?…わっ!」
 彼はぐっと前に顔を突き出してきた。
 俺はベッドから腰が浮くほど足を上げられてしまう。
「除霊、ですよ」
「嘘でしょ…っ。こんな」
 俺は苦しい(その上恥ずかしい)体勢で半泣きだった。
「あなたには悪霊が憑いてるんですよ。そう…こことか、ね」
 彼は声をひそめて、俺の股間に手を這わせた。
「ちょっ……!やめろって!!」
 俺は不自由な体で暴れた。
 しかし彼は手の動きを止めない。
 それどころか困ったことに、彼の行為によって俺のアレは次第に硬くなってしまった。
「ほら、霊が反応してきましたよ」
 盛り上がった部分を見て彼が言う。
 んな訳、ないだろ!
「ふざけんな、クソッ…こんなことしやがって、訴えてやる」
 俺は睨みつけた。
 しかし彼はいっこうに意に返さずニヤニヤしながら、
「縛られて興奮したんですかねぇ」
「っ…てめー絶対殺す!」
 俺は怒鳴った。その途端、彼のそこをいたぶる手が、とんでもない所を握ってきた。
 一瞬意識が遠のく。
 痛いっていうか、気持ちいいっていうか…
「あ、結構色っぽい声」
「……死ね!!!」
 俺はキレた。
…とは言うもの、悪足掻きと気力の無駄使いにしかならないってのはよくわかっていた。
 観念する気はないが、しかし彼の手はより執拗になっていく。
 優しく撫でさすったかと思えば、痒い所に手が届くかのような絶妙なポイントで強く握ったり、指で押してきたりして、そのうち俺もまんざらではなくなってしまった。
 布越しなのが何となくもどかしいとさえ、思えてきた。…というかその、あんまり、そこをそんな風にされると……
「濡れてきましたね」
 そんなでっかい声で言わないでくれよ!
…俺は恥ずかしさで言葉が出なかった。
 見るのもイヤだったが、股間の布が突っ張って、先端が湿っているのはわかっていた。
「うぅ…畜生……」
 俺は悔しさのあまり歯ぎしりした。
 昼間っから、知らない男にいじられて、大きくして、漏らして。
 ここまで来たら大声を出しても無駄だ。
 というよりも逆に、人には絶対に見られたくない。
 ついでに俺のアレは、現在進行形で彼にさすられ続け、ここまでは初めてってくらいに膨張している。
 今までの彼女達に申し訳なくなるほどだ。
 これは、やっぱり彼が余程のテクニシャンってことなんだろうか…それはさておいて、何だかそろそろ雲行きが怪しいので、
「あ…あの、黒木…さん」
 俺は努めて冷静に切り出した。
「俺もう…」
 出るんですけど。
 言ってしまいたかったが、彼の顔を見た途端俺は口をつぐんでしまった。
…泣いてる!?なんで?