「あふっ」
思わず声が出る。
「しー」
彼が電話口を押さえ、唇に指をあてながら、
「手伝ってあげますから、静かにしてて下さいね」
指先で、鈴口を引っかく。
俺は悲鳴を飲み込んだ。
歯を食いしばる。
「そう。いい子ですね。ほら、握っててあげますから、自分で動いてごらんなさい……あ、もしもし?いえもう大丈夫。それで?」
淡々と続けられる事務的な会話のそばで、俺は拘束の痛みに堪えながら腰を振った。
すると何とか、状態はマシになってきた。
彼の手の中に擦りつけるように、腰を小刻みに動かす。
そして俺は、いつの間にか彼の口元に目がいっていた。
よく見れば、寝ぼけ眼は別として、なかなかハンサムだ。
唇は薄く、綺麗な色をしていた。男にしては、なまめかし過ぎる。それが、さっきまで俺を愛撫していた…そんなこと考えていると、当の彼がつと振り向いて、無言で俺をくわえた。
いきなり強く吸われ、
「あんっっ!」
かん高い、女の喘ぎみたいな声をあげて、俺はついに溜まりに溜まっていた白濁を噴き出した。と同時に彼が唇をはがす。 しまりの悪い噴水みたいにコポ、コポッと流れ続ける白濁に合わせて、俺は気が抜けたように腰を揺らした。
出てきたのは何故かやたら水っぽくて、いつまでもダラダラ流れ、そこらじゅうが濡れた。
一瞬のことに頭の中が真っ白になった俺は、衝撃の余韻の中で、彼が電話を終えるのを確認した。
「まいったなぁ」
彼は携帯を仕舞いながらぽりぽり頭を掻いた。
「ガチャ切りされましたよ。完璧に疑われた」
脱ごうとしていたジャケットを羽織り直し、
「僕の恋人に」
「…!恋人って。あんた!!!」
幾分か余裕の生まれた俺は、彼の言葉に声をあらげた。
「僕のアシスタントなんですよ。少々意地っ張りな子なんですがね…ま、そういうことなんで。僕はもう帰りますね」
そう言いながら、俺の腕に巻いた数珠に手をかけた。
「いやっ…ちょっと!それじゃさっきの話は…」
すると彼は悪戯っぽく笑って肩をすくめた。…こいつ!?
俺は罵ろうとしたが、言葉が思いつかず、口を開けたままわなわな震えた。
その時、彼のポケットがもぞ、と動いた。
そして、中からぴょこ、と小さな生き物が顔を出した。
肉色の、胎児のような表皮に、のっぺらぼうの頭。ムカデのような足がついた、体長20センチくらいの…
「…うわあああっ!なんだあああ!」
わめきだす俺。彼はそいつがポケットから這いだしてからようやく気がついて、
「あ、だめだよ。おまえ」
まるで子犬にでも言うようにそれをつまみ上げようとした。が、そいつは彼の手に触れる前にさっと身を翻した。
そして、頭の部分をくるくる回転させるとのっぺらぼうの皮がパッと剥けて、目玉が表れた。
「ぎゃあああ!」