「んっ、───はぅっ」
 いきなりそんな声が聞こえてきて、僕は驚きました。
 社の中、板張りの床の上に、茨信さんと風倉先生が転がっているのが見えます。
 風倉先生が茨信さんの細い体を汚い床に組み敷いて、茨信さんの着衣を剥いてその下の肌を晒しています。肉の付いていない、白い体でした。そのくせ肌は油を塗ったようになめらかな光沢を放って、劣情をもよおした風倉先生の口吻を容赦なく浴びせられていきます。茨信さんの体はその度にわななき、吐息混じりの声で喘ぎました。 
 上半身をすっかり裸にされた茨信さんの体の上から、風倉先生がふと体を退くと、茨信さんの性器が屹立し、ぬるぬるとした液にまみれているのが見えました。
「はぁ…はぁ、はぁ…っ、早く…来て……」
 茨信さんの求めに応じるように、風倉先生はスーツのジャケットを脱ぎ去り、ネクタイとシャツを手早く脱ぎ、ベルトを引き抜きました。その次はスラックスに手をかけるのか───と思いましたが、違いました。
 風倉先生はベルトを片手に握ると、茨信さんをうつ伏せにしはじめました。そして何をするのかと思ったら、そのベルトを使って茨信さんの両手首を体の後ろで拘束してしまいました。
「嫌っ…!」
 異常に気付いた茨信さんは体をよじりましたが、勿論それで拘束が解けるわけでも、また風倉先生が解いてやるわけでもありません。信じられない、という表情で茨信さんは無言で風倉先生を見つめました。
「先生───何をするんです。やめてください」
 後ろ手に縛られた状態で再び仰向けにされながら、茨信さんははっきりした声で言いました。しかし先生はそれを無視して、自分のスラックスを脱ぎ、下着の下から勃起した性器を晒しました。それを見た茨信さんの目付きが一瞬、淫らに細められます。が、次の瞬間にそれは驚きの表情に変わっていました。
「───っ……嫌、そんなの……やめて、くださ……」
 風倉先生は茨信さんの上に───今度は上下逆向きに跨ったのです。茨信さんの顔の真上に風倉先生の屹立が逆さに押し付けられ、風倉先生の顔の前には茨信さんのそれがあるという……茨信さんは戸惑い、羞恥で頬を染めていました。鼻の先の張り詰めた欲情から目を背けるのに必死になっている様子でした。
 風倉先生は何をするつもりなんでしょうか。
 覗いている僕は自然と身を乗り出していました。
 すると風倉先生はおもむろに茨信さんの屹立をその口に含むと、唇を窄ませて上下に擦りはじめました。
「ああっ、あぁっ!」
 突然の衝撃に、茨信さんは大きな声をあげました。風倉先生の体の下で、白い半身がく、とうねります。しかし風倉先生の口の動作が余程良かったのか───金縛りになったように一瞬抵抗が止まり、立てた太腿が崩れ、風倉先生の行為を迎えるように開いていきました。
 そして僕の視線がそちらに行っている間に、茨信さんもまた、自分に差し向けられた風倉先生の屹立を口に含み、不自由になった両肩を揺すりながらそれを舌で舐めはじめていました。
 ぴちゃ、ぴちゃ、という舌が濡れた肉塊を擦る音が辺りに響き、それに混じって二人の吐息が聞こえてきます。
 体格の良い風倉先生の“それ”は、赤ん坊の腿ほど太く、筋を腫らせて重そうな鎌首をもたげています。茨信さんは小さな口を精一杯開けてそれを咥えるのですが、薄い唇が裂けてしまうかと思うくらい、頬がこけてしまっているのが見ているととても痛々しくて───同時に、とても興奮しました。
「ん、んっ!ふ、う…あっっ」ふいに茨信さんがえづいたかと思うと、唇が肉塊に吸い付いている、わずかな縁の間から白濁がごぽり、と湧き出しました。
「げほっ…」咳き込むと、喉からさらに溢れだします。液は茨信さんの顔を汚し、首筋から鎖骨、胸までを濡らしていきました。両手の自由がきかないので、目や髪の毛が汚れても、茨信さんは自分で払うことができないのです。不快そうに眉を寄せる茨信さんを、風倉先生が心配そうに覗き込みました。
 荒い息を吐きながら茨信さんが風倉先生を見上げます。
 風倉先生は意味深に笑うと、茨信さんの顔についた白濁を拭ってやり、自分の手に付いたそれを、まだ息の整わない茨信さんの口に含ませました。
 そして茨信さんはそれを、胸を上下させながら丹念に舐めました。
 風倉先生はその間にも茨信さんに散らした白濁を次々に指先で集め、餌でも与えるように茨信さんの口へもっていきます。茨信さんはじっと風倉先生を見つめて、風倉先生の白濁を指先からしゃぶり、嚥下しました。
 確証はありませんが、二人の目は狂気に走っていました。
 ようやく呼吸の落ち着いた茨信さんは唯一自由の利く足を動かし、ゆっくりと風倉先生の腰のあたりに絡めました。
 抱き寄せられるように風倉先生が茨信さんに覆いかぶさっていきます。
 そして、二人の顔が近づいていこうとした、その時でした。
「来ます……」
 茨信さんの唇が動いて、そう呟きました。
「?」
 風倉先生はその言葉に動きを止め、茨信さんを見ました。
「茨信?」
「………駄目………」
 茨信さんはその後、逃げて、と言いましたが、おそらく風倉先生には聞こえなかったことでしょう。その時僕は全身が総毛立って、激しい耳鳴りを起こして気を失いそうになっていました。
 とうとうやって来たのです。神様が───