風倉先生の体は一瞬の内にばらばらの肉片になって、茨信さんの上に降りかかってきました。強烈な血の匂いがたちこめてきて、血の海となった床から、巨大な影がのびあがりました。
 それはみるみるうちに実体化し、とてつもない重量を伴って着地しました。
地響きがして、社の中がぐらぐら揺れます。煙幕のような埃が舞い、それがおさまった後、姿を現したのは───あきらかにこの世のものではないもの、でした。
 丸く膨れ上がった全体は、ぬるぬるした表皮で覆われていました。節くれ立った腕と足はぐねぐねと湾曲し、鍵爪を備えています。そしてごつごつとした岩のような疣が頭部や腰の周辺に広がっていて、平べったい顔の外側についた両目は丸く、ギョロギョロとしきりに蠢いていました。
 神様らしいところを探すと、丁度股間のあたりに奇妙な梵字入りの褌をつけているばかりで、あとは───蛙の妖怪としか、いいようがないしろものでした。
 神様は目の前にいる、血塗れの茨信さんを見つけると、嬉しそうにゲロロロ、と喉を鳴らしてにじり寄っていきました。
 一方の茨信さんは、怯えるでもなく、拘束されたまま、顔だけを神様に向けていました。
 神様は四つん這いになって茨信さんの上に跨ると、大きく裂けた口から巨大な舌をぞろりと出しました。膨らんだ餅のようなそれはぐーっと長く伸び、茨信さんの体を舐め上げました。
「はぁっ、ん…っ」
 びく、びく、と茨信さんの体が二回痙攣し、放置されていた屹立が白濁を噴出します。
 舐め上げられた茨信さんの体は粘液でてろてろに光り、かすかに震えているようでした。
「ああっ、あ、あ、ああぁっ」
 茨信さんはひとりでに悶え、体を引きつらせはじめました。射精したばかりの中心が天に向かって伸びていきます。苦しそうに首を振る茨信さんの額に、濡れた髪が纏わりました。───体の奥から凄まじい性欲が起こって、茨信さんを焦がしつくそうとしているのです。目を剥き、歯軋りを始め、茨信さんの形相が変わっていきます。呼吸も苦しそうで、口の端に泡を吹き始めました。蛙の神様は後ろ足を器用に持ち上げ、前足で自分の体を支えながら、茨信さんの両足を拡げ、足の付け根に鍵爪のついた指を押し当てました。尻の肉を鷲掴みにして、左右に引き伸ばし、後孔に向けてさっきの巨大な舌を這わせます。
「あ、ふぅ…」
 べちゃり、と音を立てて、舌先が後孔の内側に捩じ込まれていきます。
 茨信さんはそこでまた射精しました。しかしそこは萎えることはなく、勃起したままです。茨信さんの全身は紅く色づいていました。後孔から送られてくる刺激が、その体をせわしなく揺らします。
「はっ、はっ、はっ、あ」
 茨信さんは目を閉じ、首を逸らして感じていましたが、ふいに舌が引き抜かれました。
 神様の褌の下から、巨大な棍棒のような性器が勃ち上がって来たのです。
 それは神様の背にある、岩のような疣だらけで、パンパンに肥大した真っ赤な亀頭に向かって太い血管がドクドクと脈打ちながら幾筋も走っていました。
 それが、驚くほど小さな茨信さんのお尻に向けられているのに気付いたときは、手遅れでした。まさか、と思いましたが、茨信さんの後孔は神様の風船のような亀頭の先をどうにか飲み込みました。そして、信じられないことに、入り口の何十倍もあろうかという、疣だらけのそれを、静々と奥に吸い込んでいくではありませんか。
 そしてついには、茨信さんの尻は信じられない規模に裂けましたが、出血することもなく、神様を根元まで飲み込んでしまいました。
 そして───神様が下半身をカクカクと振りだすと、茨信さんは感極まった声を上げました。両足を限界まで開き、両腕を縛られた体勢で腰から下だけが宙に浮いた状態です。
まるで、体を咀嚼されているかのような情景でした。
「あぁあん、あっ、あああぅ、ああぁ、んっ、んっ」
 もはや人間の器官にも見えなくなった茨信さんの後孔の縁から、さながら大量の水が迸ります。神様の動きはだんだん速くなっていき、そのうち前足を伸ばして茨信さんの体を抱え上げました。
 茨信さんは神様と向き合う姿勢にされ、両膝で神様の腹を抱えるようにして犯されます。
 その間、茨信さんの中心からは精液が放尿のように流れ続けていました。
 目の焦点はとっくに失っていることでしょう。だらしなく開いた口からは涎が垂れ、綺麗だった顔の面影はないはずでしたが、僕はそんな茨信さんの表情にすっかり見入ってしまっていました。
 茨信さんの喘ぎは次第に嗄れていき、ついに声が出なくなりましたが、それでも神様は茨信さんの体を手離しませんでした。気がつけば茨信さんの下腹は丸く膨らんでいました。
 神様の種を授かったのでしょう。それは今、逆立ちの体勢で犯されている最中も、送り続けられている様子でした。
「ヒーッ、ヒーッ」
 声を失くした茨信さんの口から漏れてくるのは、そんな奇妙な嘶きでした。
 そこで僕はやっと、自分の当初の目的を思い出しました。
 僕はその場から離れると、社の正面に回りました。そして────深呼吸して、社の格子戸を開けました。
「ヒーッ、ヒーッ」
ゲロロロ、ゲロロロ、ゲロロロ
 神様は動きを止め、丸い目をくるくる動かして顔を僕に向けました。背筋がぞくっとして、激しい耳鳴りと嘔吐が込み上げてきます。しかし僕はなんとか気を奮い立たせ、言い放ちました。
「その人を、離しなさい」
 神様の顔が、心なしか哂ったようでした。そして、背中の疣が一斉に蠢いたかと思うと、殻を突き破るように沢山の触手が飛び出し、僕に向かって襲い掛かってきました。
「わ」