「……っ……」
声を噛み殺して、耐えようとした。ミミズに意思なんかあるはずはない。なのに、俺が反応した途端に、体中のミミズが俺のアレに集中して動きはじめたようで、下半身のミミズ容積がみるみる増えていった。
そしてミミズは、その膨大な数でもって、俺の快感のポイントを余すところなく刺激してくる。
さっきまでは不快でしかなかったミミズの質感が、弾力のある細かい肉の粒のように思えて、人間の手でもなければ、アソコの中でもない────未体験の快楽に変わってきた。
「あ…あ………」
つい耐えられなくなって、情けない喘ぎが出てくる。やばい。勃ってきた…
そうなると、理性が吹っ飛ぶのは時間の問題だった。
下半身に力が入らない。ミミズは、勃起した俺の先端に纏わりついて刺激しはじめた。
先走りが出ているせいか、先端からミミズが滑っては登ってくる様子が、伝わってくる。
しかしそうしている間にも、黒木の体は闇に向かっていく。
「はっ……く・黒木さんっ……駄目…っ───目、さま、して」
快楽と混乱の狭間で、俺は懸命に呼び掛けた。息がすっかり上がっている。勃起した竿の表面を、ミミズがせわしなく行き来しているんだ。もどかしいとさえ思う、その微力さに、体の熱がいたずらに変化していく。
「黒木さん…っ、黒木…さん……」
「───勃起した性器を人の腰に擦り付けないで下さいよ、キフネさん」
「黒木さん!」
黒木が寝惚け眼をこちらに向け、言った。しかし、なんちゅう言い草だよ。事実だけど。
「変態ですねやっぱり」
「う・うるさいっ…」
「離して下さい」
それでも黒木が正気に戻った。内心ホッとした俺は、手を離そうとした。しかし。
「行かなくちゃ」
それを聞いて慌ててまた掴み直した。
「なっ…何でだよ!!───あっ…」
最後の「あ…」は、ミミズによる刺激のせいだ。くそ、厄介だな…
「何故、止めるんですか?止める理由なんてないでしょう?」
俺のただならぬ状態にはまるで無関心な様子で、黒木は言った。
「……止める理由…?…あ…っ、ない…けど……」
ミミズのせいで、真剣な会話ができない。しかも、今度は別の一群が、腿の間から後ろの方へ移動している。ただでさえ敏感になっている俺の体で、その部分だけは無関係、というわけにはいかなかった。
「あ、無いけど…や、けど…あ、そこ……っ」
「無いんでしょう。それなら、離して下さい」
ほどこうとする黒木の腕に、俺はしがみついた。その時、腿の奥が押し開かれる感覚が走った。──ちょっと待て、それだけは!しかしミミズ達は俺が抵抗する前に、一気に集まってきた。腿の間から、ざわざわと蟲のざわめきが聞こえてくる。
そんな…こんなのが体に入ってきたら、俺は、どうなってしまうんだよ!?
ヨダカヘビの時のトラウマが蘇る。またか。またあんな目に遭うのか。恐怖で、俺は気を失いそうになる。
「ぅああぁっ」
細長い異物感がして、入り口から熱と痛みが襲ってくる。こじ開けてくる蟲の数が増えていく。飛びそうになる意識の中で、それでも俺は黒木を掴む手を離さなかった。
「はぁ…っ、はぁ…、はぁ…あっ…、あ…」
蟲が体に入ってくる不快感と、前を刺激される快感で、頭がおかしくなりそうだった。霞む目で、黒木を見上げる。
「いい加減にしてください」
「っ……駄目だ…行かせない…」
「キフネさん。もしかして…僕のこと、好きなんですか」
「!!!!!!!????……あ・あああっ」
体の奥から、強い刺激が背中までを貫く。一瞬、頭の中が空白になった。力が抜ける。飲み込まれそうになる。
今、何と?
黒木は、喘ぐ俺の顔をじっと見て、返答を待っている。
好きなんですか?
俺が?
黒木を?
────冗談じゃない!!
そんな訳、あるか!
俺は否定しようとした。が、黒木の顔を見た途端、想像した。
もしここで、俺が否定したら。
黒木は列車に乗ってしまうだろう。
いまいち良く理解ができないが、こいつは今、失恋して、この世にひどく絶望してるんだ。
でも、それでも今、踏み止まっているのは、まだ望みがあるからだ。
俺がここで、黒木を好きだと言えば、それが叶うのかもしれない。
でも───
それは結局、嘘になって、いつかまた、同じ結果を生むだろう。嘘から出た真、ということでもあればいいが───ちょっと待て、俺はホモじゃない!
でも───
このままだと、黒木が───