「あ───」
 舌と指でのぼせた体をうつ伏せにされて、足の間に周の指を受け入れる。周はオレを体で包むように覆いかぶさって指を深く沈め、オレの耳を噛み、耳孔に舌を差し込んで息を吹きかけてきた。
 オレの中に入った指がオレを昂ぶらせて、オレの先端を濡らした。
 無意識にそれを握ったオレは、布団に顔を擦り付けて腰を揺らした。
「周…っ、はぁっ…!っ、だめ、も……欲し……」
 中心を扱くオレの手に、周の手が重なって、刺激を加えてくる。
「あぁっ」
 体がぐっと強張って、オレは射精した。そして肩から力が抜けた途端に、張り詰めた肉塊がオレの中に捩じ込んできた。
「あああっ!…んっ!あ、あ、あ」口の端から涎が垂れてきて、オレは歯を噛み締めた。
 周は腰をオレの中に深く差し込むと、緩慢な動きで退いた。
 寒さに似た感覚がオレの中を引っかいて、オレは息を吐いた。
「う…あ!あ!───っ」
 ず、と音を立てて深く貫かれた。意識が投げ出されて、息が止まった。
 腰を両側から掴まれて揺すられる。周はオレの中を突き破るような勢いで抜き差ししてきた。オレは痛みと衝動に呼吸を乱しながら叫んでいた。
「は、はっ、う、ぁ、周…あ……お前、今日…っ、なんか……ぁ」
 挿入したまま、体を表に返されて、オレは周と向かい合って奴の膝に跨る格好になった。
 結合がまともにオレの弱点に当たって、オレは呻いた。
 正面から乳首を摘まれ、舌で転がされながら突き上げられた。
 オレはもう体に力が入らなくなって、周の肩に掴まるのが精一杯だった。
 周が最初の絶頂に達したあたりには、オレは半分失神していた。

 その後オレは、朝まで周にいたぶられる破目になった。何度も中で出されて、体にもぶっかけられて、オレの体臭は見かけ同様、何だか白っぽくなっていた。
「汗臭ぇ、オレ…」
 夜明けの部屋に全裸で転がったオレは呟いた。やられ過ぎて、眠気も起きない。身動きすることも億劫で、畳の上に大の字になったまま、周を探すと、隣の部屋からすっかり身支度を整えて姿を現した。
「いつまで寝てるんだ。もう出るぞ」
「………あ……?」
 オレは目だけ動かして周を見上げた。なに冗談言ってるんだ?馬鹿かこいつ。
「早くしろ。車が来てる」
「何で…ちょ……」
 周はそのまま背を向け、足音で階下に下りていくのがわかった。
「あ、そう」
 オレは独り言を言うと、起き上がった。強い眩暈が起きたが、構わずに立ち上がって、服を放置したまま歩き出した。料亭は午前中閉めているのか、廊下から玄関までは誰にも会わなかったが、素っ裸で靴も履かずに出てきたオレを見て、周はさすがに眉をひそめた。
 しかし何も言わずにリムジンの後部にオレを乗せ、隣に座ってきた。革張りのシートが尻から零れた白濁で汚れたが、オレは平然としていた。運転手も、オレ達とはもう長い付き合いだ。何も言ってこなかった。
 朝はまだ明けて間もなかったが、車道に出て交差点に入ると車の並びは多かった。リムジンの窓は遮光されて外からオレの様子は見えないはずだったが、フロントの視界を横切る歩行者にはなぜか気が散った。
 隣の周は煙草を取り出して、火を点けた。煙を吸い込んで口から離すのを、オレは目ざとく奪い取って吸った。腹減ったな、と思った。
 周はもう一本新しい煙草を取り出して、吸いだした。
 オレ達はしばらく無言で煙草を吸っていた。
 視線を感じてオレが顔を向けると、周はオレの口から煙草を取り上げた。そして傍らの灰皿に自分の煙草と一緒に突っ込むと、キスしてきた。
 オレは口を開けて周の舌を迎え入れ、唾液を飲み込みながらシートに背を倒した。被さってきた周の服に、オレの汚れがつかないかと心配が過ぎったが、周は気にせずにオレの上に乗っかってきた。
 周はチャックを下ろしただけでオレの中に入ってきて、強引にオレの腰を引き寄せた。
 オレは歯を噛み合せて、声を殺した。そこに周の指が割り込んで、口をこじ開けられた。
「っあ…!」
 オレは声を出した後、運転席に目を向けた。走行している最中に、こっちを見ているわけがなかったが、バックミラーにオレ達の姿が映っていた。オレは口の中の指を噛みながら、周を睨んだ。すると腰を滅茶苦茶に打ち込まれた。
「は…ぁ…!!」
 オレはたまらなくなって仰け反った。貫かれながら両手を伸ばして、周の肩を押しやろうとしたが、どんなに力を込めても周の動きは止められなかった。
「やめろよ」オレはとうとう大声を出した。「周。やめろ!やめろってば。周……!」
 周はオレの声を無視して、オレの上に体重を掛けてきた。声が潰されて、オレの口の上に周の肩口が押さえつけられた。もがくオレの耳に、周の声が聞こえた。
「俺と逃げるか」
「───え?」
 オレは驚いて周を見た。動かない左目と、目が合った。周は黙っていた。目の端に運転手の視線を感じた。オレはもう一度、周の顔を見て、目だけで頷いた。すると停滞していた突きが激しくなった。オレは喉を上げて喘ぎ、射精するまで腰を揺すった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
十一