「二週間前だ。…それから毎日ここに来て………お前を、待ってた…」
 オレは煙草を咥えたまま、周の方を振り返った。周は横を向いたまま、話を続けた。
「明後日、向こうに戻る。待ち続けた甲斐があったよ。最後の最後に、お前と会えた───ずいぶん遅くなっちまったが、俺と一緒に向こうに行かないか」
 周はオレの方に顔を向けた。
「今度こそ、お前の傍から離れないよ。約束する」
「……てめえの約束は都合が良すぎるんだよ」
 周は叱られた犬のように首を項垂れた。
 こいつ、案外どうしようもないなとオレは思った。オレがここに来る保障もないのに、真剣にこんな辺鄙な場所で、何時間も、オレを待っていたんだろうか?───バカ過ぎる。あっちに行っている間にネジが緩んだんだろうか。
 周はごめん、という顔でオレを見ていた。
 オレは周の頭に手を伸ばして、頭をくしゃくしゃに撫でた。目を丸くする周に、オレは唇を押し付けた。首に腕を回しながら、目を閉じて強く吸った。唇の味とオレのと同じ煙草の味が混ざって、温かい唾液がオレの口の中に拡がった。


「ここでお前と一緒に寝た時、襲ってしまいたい気持ちを抑えるのが大変だった」
「…っ、ふ……ぁ」
 苦笑しながら、突きに勢いをつける周の腰に足を掛けて、オレは奴を締め付けた。
「んっ……インポだったくせに…妄想だけは立派だ……っ、あ」
 突き上げる角度を変えられて、オレはびくりと体を震わせた。耳元に周の吐息がかかる。
 根元まで挿入されて、中で小刻みに突かれると、壁についた背中がわなないた。

「…っ……も、いっ……」

 互いに果てた頃、雨は止んでいた。オレは下を履くと携帯を取り出した。
「タクシーか?」
 訊ねる周に、オレは首を振った。
「お前についていく前に、やることがあるんだ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
十一